研究課題
我々は、マイクロTDMを提案し、最近6年間での健康チェック時の 13,000人以上の健常一般人の生体情報とPOCT (Point OF Care Testing) を用いた血液生化学測定値を集積した。他方、入院患者3,000人以上30種類以上の血漿中および臓器内の組織内濃度測定値から、日本人の母集団薬物動態パラメータと組織内薬物動態を報告してきた。本研究では、この両実績を日本人の基準値とし、未病、予防、医療間のシームレスな医療モニタリングシステムを構築する。そのために、在宅 でのPOCTを用いたリアルタイム生化学測定とDBS (Dried blood spot)法を用いた薬物濃度測定法を構築することを目的とした。 最近6年間での健康チェック時に13,000人以上の健常一般人の生体情報とPOCT (Point OF Care Testing) を用いた血液生化学測定値を集積した。この集積結果を基に、性差、年齢別に測定値を検討する。入院患者3,000人以上30種類以上(抗がん剤、抗菌剤、抗てんかん剤、等)の日本人の血漿中および臓器内(腹水、胆汁、膵液、尿、前立腺組織、精巣、肺胞液、人工透析液、人工心肺還流液、等)の組織内濃度測定値から、日本人の母集団薬物動態パラメータと組織内薬物動態を報告した。令和2年度には新たにフロモキセフ(血漿、前立腺組織)、メトロニダゾール(血漿、腹水、腹膜脂肪組織)、ダプトマイシン(血漿、人工透析液)、アンピシリン―スルバクタム(血漿、前立腺組織)、パズフロキサシン(母集団解析)、ゲンタマイシン(母集団解析)の報告を行った。以上の薬剤においても、我々が導入してきたPK/PD理論とモンテカルロ・シミュレーションを用い、患者の治療効果が推定できる可能性が出てきた。そこで、入院前、入院中、退院後のシームレスなマイクロTDMシステムを確立する。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度には、過去に報告した実績に加え、さらに抗菌剤の血漿中薬物濃度と全血中薬物濃度と生体組織液との相関関係を明確にし、DBS法による各種抗菌剤 測定値から標的臓器内濃度への推定法を確立することとした。そこで、得られた測定値から、ベイズ推定法、モンテカルロ・シミュレーションを搭載したコン ピュータプログラムの開発に着手した。さらに、在宅でのPOCTを用いたリアルタイム生化学測定とDBS法を用いた薬物濃度測定値を活用し、入院前、入院中、退 院後のシームレスなマイクロTDMシステムを確立することに着手した。しかし、試料は既に血漿中および臓器内濃度測定値を行った施設より入手することに成功 したが、いまだ十分な量の生体試料が集まるに至っていない。そこで、今後もさらなる試料の集積が必要である。
令和3年度以降には、本研究を継続し、コンピュータソフトに搭載し、遠隔地医療に利用できるようにする。さらに、マイクロTDMで得られた医療関連データを活 かし、「狭小地区における人口分布」「気候・環境・地方での地域特性」「食生活の嗜好傾向」等の地域特性を加味することで、 我々が蓄積した日本人のデー タを活かした、「きめ細やかな個別医療」が可能になる。 本システムが稼働すると、医療機関や薬局を訪れないと医療を受けられないという現状が、 医療機関 に行かなくても高度な医療を受けられるという医療の変革につながり、世界中の医 療を受けられない地域に住む医療難民でも高度な医療を受けられる様になる と考えている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)
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