研究課題/領域番号 |
19K07203
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
中埜 貴文 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (40720793)
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研究分担者 |
水間 俊 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (80229715)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / ヘム / 薬剤性肝障害 / ヘムオキシゲナーゼ / タモキシフェン |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)では体内に鉄の蓄積を認め、鉄代謝異常がその病態の進行に関連していることが示唆されている。細胞内で過剰となった鉄は活性酸素の産生を亢進させ、それに随伴する酸化ストレスが病態進展に関与すると考えられるが、その機序についての知見は殆ど無い。本研究では、NASHの発症、病態進展と鉄代謝異常を結びつける要因として、肝細胞内での鉄利用経路の一つであるヘム生合成経路に着目し、NASHモデルにおけるヘム生合成・代謝障害とその肝障害性との関連について実験的に検証することを目的としている。 2020年度においては、NASHの起因薬剤として知られているタモキシフェンに着目して検討を行ったところ、タモキシフェンを曝露したヒト肝由来細胞株において、ヘム分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ(HO-1)の基質であるHeminを共処理することで細胞毒性が抑制されることが明らかとなった。この効果は、タモキシフェンの毒性に対し特異的であり、薬剤性肝障害を惹起することが報告されているベンズブロマロン、アミオダロン、アセトアミノフェン等の薬物では同様の効果はみられなかった。また、HO-1阻害剤であるZinc-Protoporphyrin Ⅸで処理した場合でも同様の毒性抑制効果が観察され、HeminとZinc-Protoporphyrin Ⅸを共存させた場合に最も強く抑制効果が観察された。さらに、この毒性抑制効果の程度はHO-1のタンパク発現量と相関していることが明らかとなった。このことから、HO-1はヘムの分解産物であるビリベルジンや一酸化炭素等を介して細胞保護的に機能すると考えられているが、ヘムの分解産物による細胞保護作用の他にも、異なる機序で肝障害に対して防御的に働く可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、メチオニン・コリン欠乏食により誘発される脂肪性肝炎をNASHモデルとして検討を進めることを計画していたが、本研究課題の遂行の結果、当モデルではむしろ栄養学的な影響が大きいことが考えられたことから、別モデルの探索を行った。その結果、NASHの起因薬物であるタモキシフェンもヘム生合成経路に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。当初の研究計画では予定していなかったが、今後タモキシフェンの毒性抑制のメカニズムを検討することで、本課題の進展に資する知見が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の検討で得られた結果をもとに、Heminによるタモキシフェンの毒性に対する防御効果について、メカニズムの解析を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用期限等の観点から、購入を留保している試薬、消耗品があるため次年度使用額が生じた。今後の研究推進方策に従い、必要消耗品の購入に使用する計画である。
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