研究課題/領域番号 |
19K07204
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
藤田 健一 昭和大学, 薬学部, 教授 (60281820)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | レゴラフェニブ / 活性代謝物M-2 / 活性代謝物M-5 / 遊離形血漿中濃度 / 無増悪生存期間 / 相対治療強度 / 治療中止 / ABCG2 |
研究実績の概要 |
これまでに、36例の結腸・直腸がん患者をレゴラフェニブ臨床研究にエントリーした。レゴラフェニブ、活性代謝物M-2とM-5の総血漿中濃度および遊離形血漿中濃度を測定した。レゴラフェニブの総血漿中濃度が最も高く、M-2、M-5の順に低下した。一方、M-2とM-5の遊離型濃度はレゴラフェニブと比較して高かった。これは世界初の知見である。本結果により、レゴラフェニブの効果や毒性の本体が、親化合物であるレゴラフェニブではなく、活性代謝物である可能性が示された。 M-2またはM-5の遊離形濃度ベースの暴露量(AUC)が全患者の平均値よりも高い患者における無増悪生存期間は、低い患者と比較して有意に短かった。AUCの高い患者における1サイクル目の相対治療強度は、低い患者と比較して有意に低かった。その原因を精査したところ、これらの患者においては1サイクル目にグレード2または3の有害事象が認められ、結果としてレゴラフェニブによる治療が中止されたことが明らかとなった。M-2またはM-5の遊離形濃度ベースのAUCは体重と逆相関し、レゴラフェニブの治療においては、160 mg/body/dayの一律の投与法ではなく、体重に基づいた投与量の設定が必要な可能性が示唆された。 M-2またはM-5の遊離形濃度ベースのAUCが高い患者においては、レゴラフェニブにより惹起される典型的な皮膚障害である手足症候群を発症するまでの期間が、有意に短いことを見出した。 Day 15において、ABCG2蛋白の発現低下と関連する遺伝子多型(421C>A, Q141K)を有する患者においては、M-2またはM-5の遊離形濃度ベースのAUCが有意に高いことを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した2019年度の研究成果は、本研究にて明らかにすべき目標である、 (1) レゴラフェニブ、活性代謝物M-2およびM-5の遊離型濃度基準の PK/PD解析を行い、これらの化合物の遊離形血漿中濃度基準の薬物動態学的特性と効果や毒性との関係を実臨床にて解明する。 (2) レゴラフェニブ、活性代謝物M-2およびM-5の遊離型濃度基準のPGx解析を行い、ABCG2を含むこれらの化合物の体内動態と関連する因子の遺伝子多型と、遊離型濃度基準のPK/PDとの関係を実臨床にて明らかにする。 を概ね満たすものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
レゴラフェニブによる治療を行う結腸・直腸がん患者のエントリーを進め、2019年度に得られた研究結果のさらなる検証を行う。 レゴラフェニブと代謝物のヒト血漿中消失を規定する輸送担体を特定する。 ABCG2以外のトランスポーターや、CYP3A5などの薬物代謝酵素の遺伝子多型を調べ、レゴラフェニブと活性代謝物の体内動態や薬物応答との関係を明らかにする。 内因性基質を用いたCYP3A4活性の定量と、レゴラフェニブと活性代謝物の体内動態の関連を明らかにする。 レゴラフェニブおよび代謝物の体内動態を説明するPBPKモデルの開発を開始する。 これまでに6名の患者において、レゴラフェニブの投与によるグレード3の多型紅斑が認められた。そこで多型紅斑の発症機序についても解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた以下の研究項目については、2020年度以降に進めて行くことになったために、次年度使用額が生じた。 1.レゴラフェニブと代謝物のヒト血漿中消失を規定する輸送担体の特定。2.レゴラフェニブや活性代謝物の代謝や輸送に関与する複数の薬物代謝酵素や輸送担体の遺伝子多型の解析。3.内因性基質を用いたCYP3A4活性の定量と、レゴラフェニブと活性代謝物の体内動態の関連解析。
|