研究実績の概要 |
我々が行ったレゴラフェニブの前向きな臨床試験では、66%の症例に手足症候群が認められた。手足症候群の程度と関連する遺伝子多型を見出すために、後方視的にエクソーム解析を行った。その結果、VGFE-A、及び本因子を産生する経路に存在する因子であるCCL4L2の遺伝子多型であるVEGFA rs3025009、及びCCL4L2 rs3744596が、それぞれグレード2以上の手足症候群の発症、及びグレード3以上の手足症候群の発症と有意に関連することを見出した。本結果は、VGFE-Aを産生する経路が、手足症候群の発症と関連する可能性を示唆する。 レゴラフェニブの前向き臨床試験では、40名中7名においてグレード3の多形紅斑も認められた。これらの症例はいずれも治療中止となった。多形紅斑の発症については、免疫学的機序との関連が明らかになっている。そのため、Human Leucocyte Antigen(HLA)のハプロタイプと、多形紅斑の発症の関連について後方視的に評価した。その結果、多形紅斑を認めた7症例のうち6例が HLA-C*01:02を有し、一方、未発症の症例では本ハプロタイプの頻度は8/33と低かった。以上、本ハプロタイプが多形紅斑の発症と有意に相関することを見出した(Odds ratio [OR] = 18.75, p = 0.004)。HLA-B*46:01 もまた、多形紅斑の発症と有意に相関した (OR = 11.63, p = 0.029)。 マウスや細胞での研究により、レゴラフェニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬による手足症候群は、(1) 触接的なケラチノサイトの障害、(2) VEGFR-2の阻害、及び(3) 皮膚における物理的な障害に対する炎症反応、と関連することを見出した。
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