研究課題/領域番号 |
19K07208
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
小笠原 裕樹 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20231219)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カルボニルストレス / 統合失調症 / モデルマウス / メチルグリオキサール / クレチンキナーゼ / 海馬 / 糖化 |
研究実績の概要 |
グリオキサラーゼI欠損マウスにビタミンB6欠乏餌を与えて作成したカルボニルストレス性統合失調症(CS-SCZ)モデルマウスの海馬におけるタンパク質のカルボニル化について、野生型マウスと比較した結果、メチルグリオキサールイミダゾロン(MG-H1)化されたタンパク質の有意な蓄積を見出した。この変化は、昨年度の検討において前頭前皮質でも観られたが、その程度は海馬において、より顕著であった。モデルマウスと健常なマウスの海馬を試料として2次元泳動後、LC-MS/MSを用いて詳細な解析を行ったところ、モデルマウスの海馬においてはミトコンドリア型クレアチンキナーゼ(CK-mit)を含む7種のタンパク質におけるMG-H1化の亢進が認められた。 次に、その機能的変化の評価としてCK-mit活性を測定したところ、モデルマウスにおいて、CK活性が有意に低下していることが解った。この結果から、CS-SCZモデルマウスの海馬内においては、クレアチンリン酸系に依存したエネルギー産生能が低下することで、突起伸張が阻害されるなど神経細胞に深刻な障害が起こる可能性が示唆された。 また、健常人と患者由来のiPS細胞をアストログリア細胞に分化させ、各々の細胞内におけるメチルグリオキサール濃度とカルボニル化タンパク質の測定を行ったところ、メチルグリオキサール濃度に有意差は認められなかったが、各種AGE化タンパク質の検出を行い、比較解析した結果、患者由来iPSより得られたグリア細胞において、複数のAGEs化タンパク質が増加、蓄積していることが分った。この結果から、CS-SCZ患者脳内のグリア細胞においても、タンパク質のカルボニル化が亢進していることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構築したモデルマウスの脳内において、糖化が亢進していることが、より明瞭なものとなった。また、統合失調症において重要な領域である海馬で、多くのMG-H1化タンパク質が見出された。更に、モデルマウスの海馬において海馬においてミトコンドリア型CKの活性が低下していたことは、カルボニルストレスがミトコンドリア機能に影響を及ぼす可能性を示唆する重要な知見であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マウス脳内に微量のメチルグリオキサールを投与することで、海馬におけるカルボニル化タンパク質の蓄積について解析すると共に、海馬のミトコンドリア画分を調製して、CK-mit活性の変動を調べる。更に、カルボニルストレス性統合失調症患者由来のiPS細胞より分化したアストログリアに蓄積するカルボニルタンパク質を同定すると共に、神経細胞に分化させた場合についても同様の検討を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用量が、予定より若干少なかったために一部を繰り越した。次年度、早々に物品費として使用する予定である。
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