研究課題/領域番号 |
19K07209
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
加藤 美紀 名城大学, 薬学部, 准教授 (70345594)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 異物解毒機構 / 脳精神疾患 / 脳腸相関 / シトクロムP450 / UDP-グルクロン酸転移酵素 |
研究実績の概要 |
社会の高度化、複雑化に伴い、うつ病などの精神疾患や、てんかんのような神経活動の異常により引き起こされる脳疾患の罹患率が増加している。自律神経系やホルモン、サイトカインを介して脳と密接に関連しているのが、第二の脳とも言われる腸である。近年、脳と腸の機能的関連性、すなわち「脳腸相関」が注目され、盛んに研究が進められている。そこで本年度は、脳精神疾患としててんかんを選択し、てんかん発作が脳、小腸、肝臓での異物解毒機構に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。ラットでのカイニン酸誘発性のてんかん発作は、ヒトの側頭葉てんかんで認められる神経細胞の傷害パターンと類似していることから、本モデルを用いて検討を行った。また、異物解毒機構の中でも薬物の体内濃度に影響を及ぼし、小腸や肝臓に発現している主要な薬物代謝酵素のシトクロムP450とUDP-グルクロン酸転移酵素に焦点を絞って検討した。その結果、てんかん発作により、小腸の一部のP450分子種の発現変動が認められたが、肝臓のP450に関しては変動が認められなかった。一方、UDP-グルクロン酸転移酵素は、小腸、肝臓ともに発現に変動が認められなかった。申請者らの以前の研究において、同様にカイニン酸誘発性のてんかん発作により、海馬や皮質のP450やUDP-グルクロン酸転移酵素の発現が変動することを明らかにしているが、それらの分子種の発現も小腸や肝臓で変動しなかった。また、異物だけでなく生体内基質の代謝を行うP450のうち、アラキドン酸の代謝に関与するCYP2J3についても検討した。CYP2J3は脳での発現は減少したが、小腸や肝臓での発現は変動しなかった。以上より、少なくとも、てんかん発作により小腸や肝臓に発現する多くの薬物代謝酵素の発現が変動することはないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は既に疾患モデル動物として確立しているてんかん誘発性モデルラットを用いたため、疾患モデルの妥当性について検討する必要がほとんどなかった。しかし、次年度は他の疾患モデル動物の検討に入る予定であり、その場合、その疾患モデル動物の妥当性を評価し、慎重に選択する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、てんかん発作により発現が変動したと推察される小腸の薬物代謝酵素について、その発現変動メカニズムを調査するに至らなかったため、令和2年度はそのメカニズム解明を行う。さらに、他の疾患モデル動物を用いて、異物解毒機構の脳腸相関について検討を行う予定である。令和元年度は、学会発表や論文発表ができなかったため、次年度からはできる限り取り組みたいと考えている。一方で、本申請課題は、申請者の所属する大学において学部生あるいは大学院生とともに実施しているため、新型コロナウイルス感染症による大学の閉鎖期間が延長された場合、研究そのものが遂行できない。そのリスクも考慮する必要がある。
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