研究実績の概要 |
小児におけるADHD治療薬の使用と心血管系疾患リスクとの関連を推定することを目的に、日本の健康保険請求データを用いて、4,773人の小児を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。心血管疾患系イベントとして心筋梗塞、脳血管疾患、心不全を定義した。ADHD治療薬の使用に関連する心血管系疾患リスクをCox比例ハザードモデルを用いて評価した。その結果、ADHD治療薬投与群では、非投与群と比較して、心血管系疾患イベントのリスクは増加していなかった(性・年齢調整済みハザード比=1.81;95%信頼区間=[0.45, 7.35])。本研究の結果、心血管リスクと関連したADHD薬の使用についてのエビデンスは示されなかった。今後、心血管系イベントに不整脈および高血圧を追加した解析や、ADHD治療薬の使用状況および条件を詳細に分類した解析を行う必要がある。 日本の医薬品副作用報告データベースを用いて、小児における向精神薬のシグナル検出を行うにあたり、2004年から2017年までの小児の医薬品副作用(ADR)報告の内容および傾向を明らかにした。504,407件のADR報告から、最終的に21,359件(4.2%)の報告を用いた。その結果、ADR報告の半数以上が10歳未満の小児を対象としていた。ADR報告の約30%には複数の被疑薬が含まれていたが、年齢による差はなかった。10歳未満と10~19歳のADRでは、それぞれ4.7%、3.9%であり、ADRの致死的転帰の割合は、10歳未満が4.7%、10~19歳が3.9%であった。最も多く報告された薬剤、副作用、薬剤と副作用のペアは、それぞれオセルタミビル、異常行動、オセルタミビルと異常行動であった。小児における向精神薬のシグナル検出を行うにあたり、用いるデータベースに含まれるADR報告の特徴を正しく理解するための基礎解析を行った。
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