研究課題/領域番号 |
19K07214
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
降幡 知巳 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (80401008)
|
研究分担者 |
小島 伸彦 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (90342956)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 血液脳関門 / インビトロモデル / 薬物脳移行 / 不死化細胞 |
研究実績の概要 |
本研究ではヒト血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)を包含する不死化細胞によるヒト脳モデル(ミニブレイン)の確立を目指している。当該年度では、まずその基盤となる3種ヒト不死化BBB細胞(HBMEC/ci18:脳毛細血管内皮細胞、HBPC/ci37:ペリサイトおよびHASTR/ci35:アストロサイト)を用いて、ヒト不死化スフェロイド型BBBモデル(hiMCS-BBB)を構築し、そのBBB機能の検証、および本モデルの高分子脳内移行性解析への応用に取り組んだ。 三種ヒト不死化BBB細胞を特殊なプレート上に播種すると自発的に単一の球形スフェロイド(hiMCS-BBB)を形成した。細胞局在解析の結果、HBMEC/ci18はスフェロイドの外側に単層を形成しており、またHASTR/ci35はその中心部に、HBPC/ci37はHBMEC/ci18の内側を沿うように局在していた。また、hiMCS-BBBでは密着結合タンパク質 (Claudin-5, ZO-1) および排泄トランスポーター (P-gp, BCRP) の発現が認められ、さらにP-gpの機能も認められた。したがって、hiMCS-BBBは基本的なBBB機能を有していることが明らかとなった。 続いて、hiMCS-BBBの高分子透過性解析への応用を検証するため、脳移行性があると報告されている抗トランスフェリン受容体抗体(MEM-189)を用いて透過性解析をおこなった。その結果、MEM-189抗体は対照であるcontrol IgGよりも高いスフェロイド内移行性(つまりBBB透過性)を示した。 以上、当該年度の研究によりミニブレイン構築の基盤となるhiMCS-BBBモデルを確立し、さらにそれを用いた高分子の脳移行性評価法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終目的であるミニブレインの基本となるhiMCS-BBBを確立し、その基本的なBBB機能を証明することが出来たことは、研究の大きな進展であると捉えることが出来る。また、当初予定のとおり、hiMCS-BBBによる抗体やペプチドなど高分子の脳移行性評価法を確立出来たことも進展である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の最も大きな課題は、神経細胞をhiMCS-BBBに組み込んでいくことである。引き続き独自の細胞株樹立に挑戦する予定であるが、難航する事態に備え、これと並行して、市販の神経由来細胞を活用して脳モデル構築を進めることとする。 また、高分子の脳移行性評価をさらに拡充するとともに、hiMCS-BBBの病態モデル構築への応用にも積極的に取り組む。これらにより、hiMCS-BBBを産学へ広く普及させるための実績を積み上げていく予定である。
|