研究課題/領域番号 |
19K07216
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
橋本 征也 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (90228429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホスファチジルセリン / ホスファチジルコリン / リポソーム / ビソプロロール / フレアイニド |
研究実績の概要 |
前年度において我々は、腎尿細管上皮細胞の惻底膜に多く発現するホスファチジルコリン(PC)のリポソームを作成し、臨床上繁用されるビソプロロール(BIS)の取り込みを評価した。次いで、頂側膜側に多く発現するホスファチジルセリン(PS)を添加した PC/PS リポソームを作成し、BIS の取り込み活性の変化を評価した。その結果、PC/PSリポソームでは、BIS の輸送活性の上昇が観察され、BIS取り込みのpH依存性や他の脂溶性カチオンによる取り込み阻害などを再現できた。また、基質の脂溶性(Log D 値)に依存した取り込み活性の上昇も再現できた。しかし、基質の極性表面積(Log PSP 値)に依存した取り込み活性の低下は再現できなかった。 そこで本年度においては、PC や PS だけでなく、腎上皮細胞膜を構成する主要な成分である、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロールを追加した5成分含有リポソームを作成し、BISと同様にプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の基質であることが明らかとなったフレカイニドの取込み特性を、LLC-PK1細胞のそれと比較した。その結果、LLC-PK1細胞におけるフレカイニド取り込みは、細胞外pHのアルカリ化よって増加し、水溶性カチオンによる阻害は受けず、ジフェンヒドラミンによって有意に阻害された。5成分含有リポソームにおいても、pHの増加に伴いフレカイニドの取り込みは増加傾向を示し、ジフェンヒドラミンによって有意に阻害された。11種のカチオン性化合物のジフェンヒドラミン感受性取り込みは、LLC-PK1とリポソーム両者において、Log D 値と正の相関を示し、Log PSP 値と負の相関示した。従って、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体は、リン脂質であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、腎尿細管上皮細胞におけるプロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体の、少なくとも一部を明らかにすることができた。今後の研究に弾みがつくと予想される。
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今後の研究の推進方策 |
脂溶性カチオンの腎尿細管分泌には、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系に加え、P等タンパク質が関わるとの報告がある。そこで、P糖タンパク質の基質ではないと報告されているジフェンヒドラミンを用いて、ラット定型腎クリアランス実験を行う。ジフェンヒドラミンの腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスを大きく超え、有意な尿細管分泌があるとの予備的な知見が得られている。今後は、薬物の種類を少なくとも5種類以上に増やし、プロトン/脂溶性カチオン対向輸送系の重要性を確認する。
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