研究課題/領域番号 |
19K07217
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
崔 吉道 金沢大学, 附属病院, 教授 (40262589)
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研究分担者 |
嶋田 努 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90409384)
藤田 有美 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (50876026)
赤下 学 帝京大学, 薬学部, 助教 (90781542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 体内動態変動 / 個の医療 / 高齢者総合機能評価 / バンコマイシン |
研究実績の概要 |
加齢は薬物体内動態を変動させる要因となるが、実臨床においては同世代間の個人間変動が大きく、複数の要因が複合的に関与することから、暦年齢に応じた一義的な評価の臨床的な意義は乏しい。近年、高齢者の安全で適正な医療・介護を提供するために身体的、社会的、認知機能、依存疾患、薬剤評価等を包括的に評価する高齢者総合機能評価 (Comprehensive Geriatric assessment, CGA)が浸透し初めている。そこで本研究では高齢者の体内動態規定因子としてのCGA有用性を腎排泄型薬剤であるバンコマイシンに注目し、臨床データを用いて検証した。 当院の患者を対象に、推定腎機能の指標であるクレアチニンクリアランスCCrに対して、暦年齢、既存CGAのfTRST、CCI、CACI、ECI、ADL(BI)との相関について検討したところ、CCrの推定式に年齢が含まれているにも関わらず、相関係数は低かった。また、CGAとはほとんど相関がなかった。定常状態でのトラフバンコマイシン血中濃度を投与量で補正したC/D比に対する暦年齢およびCGAとの相関もCCI以外で、やや相関があったが、低い相関係数だった。既存のCGAの評価項目のみでは、加齢による薬物体内動態の個人間変動と相関するものはなかった。次にCCrとCGA等の組合せとの関連性について重回帰分析を行ったところ適合度の高い回帰式は得られなかったが、C/D比とCGA等の組合せ項目 (CCr、ADL (BI)、BMI、5種類以上の投薬の有無)の関連性においては決定係数は0.641と適合度の高い重回帰式が得られた。実際の体内動態であるC/D比がCGAと関係していたことから、構成要素の違いにより、推定CCrとCGAの関連性が見られなかった可能性がある。今後、重回帰式の妥当性や他の薬物についても検討する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学院生や薬剤師等、研究協力者とで一定の研究の進展がみられたが、施設の新型コロナ感染症対策で一部活動が制限され、研究の進捗が必ずしも十分でないため
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今後の研究の推進方策 |
腎機能評価について、尿測等のデータが得られる症例を優先し、対象薬剤を広げるなど、患者情報の抽出方法と評価方法を見直し再解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大のため学会がWEB開催となり旅費の執行が減額となった。また、感染症対策として活動自粛のため、人件費・謝金も減額となった。残金は、次年度の物品費として執行予定である。
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