研究課題/領域番号 |
19K07219
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
矢野 育子 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (50273446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リスペリドン / フェンタニル / ブレクスピプラゾール / PBPKモデル / 特殊集団 |
研究実績の概要 |
統合失調症治療薬リスペリドンとその活性代謝物であるパリペリドンのPBPKモデルをSimCYP を用いて、文献上の薬物動態及び物理化学データを基に構築した。構築モデルによる予測値と患者背景の異なる25の臨床試験(成人15試験;小児8試験;妊婦2試験)の実測値との対応を検討した。その結果、ほぼ全ての実測値は90%予測範囲に入っており、予測精度も良好であったことから、作成したモデルは、人種差や小児・妊婦といった特殊集団における薬物動態予測に対しても使用可能であることが示された。 フェンタニルは人工呼吸下にある早産の新生児においてしばしば用いられるが、重篤な副作用として呼吸器障害が認められる。そこで、SimCYP を用いてフェンタニルモデルを構築し、新生児における予測精度について評価した。構築したPBPKモデルによる予測と、既報の臨床血中濃度や自施設の新生児血中濃度との対応は良好であった。また、予測AUCを計算したところ、重篤な呼吸障害を示した新生児では、それ以外の新生児よりも高い傾向が明らかになった。 統合失調症治療薬ブレクスピプラゾールのヒトでの胎盤通過および乳汁移行に関する報告はない。今回、ブレクスピプラゾール服用中の母親の血漿、臍帯血、母乳中濃度を測定した結果、ブレクスピプラゾールの乳汁中濃度は1.0-2.3 ng/mLの範囲にあり、相対的乳児摂取量は0.8-1.7%、ブレクスピプラゾールの臍帯/母体血漿中濃度比が0.37であった。従って、ブレクスピプラゾールは胎盤通過性を認めるが、相対的乳児摂取量は低いため安全な母乳投与であることが示された。母体から乳児への薬物移行の予測に際して、母体の妊娠経過に伴う動態変化とともに、胎盤通過性、乳児の薬物動態を考慮したモデル構築の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス対応など病院業務で繁忙であったため、研究時間を十分確保することが難しかったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究テーマの新規抗てんかん薬についての臨床データが入手しづらい状況にあるため、臨床データの収集が可能であったリスペリドンを対象薬として、妊婦における適正使用に向けた数理学的モデルの構築に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、国際・国内学会への参加が制限されたことや、研究が遅れたため。
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