研究課題/領域番号 |
19K07222
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 雄一 九州大学, 薬学研究院, 共同研究員 (60464385)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | EGFR-TKI / SRC / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)は、非小細胞肺癌患者に対して広く用いられる分子標的治療薬である。しかしながら、治療の継続により耐性を示すことが問題となっている。第3世代EGFR-TKIオシメルチニブは従来のEGFR-TKIの耐性克服のために開発されたが、本薬剤においても耐性癌の出現が明らかになってきた。本研究では耐性克服治療創出のためにオシメルチニブに対する耐性肺癌株を用いて耐性メカニズムを明らかにすることを目的として検討を行っている。これまでにオシメルチニブ耐性メカニズムについてオシメルチニブ耐性株とその親株を対比させながら検討を行い、オシメルチニブ耐性株におけるSRCファミリーキナーゼ(SFK)の活性化とCDCP1やAXLの発現増加及びSFK阻害剤に対する高感受性を示すことができた。その結果に基づき、オシメルチニブ耐性株におけるCDCP1発現増加によるSFK活性化の可能性を検討した。オシメルチニブ耐性株ではCDCP1とSRCとの結合とCDCP1発現抑制によるSFK活性抑制効果が観察され、CDCP1がSFK活性化に関与していることが示唆された。また、動物実験系を用いてオシメルチニブ耐性腫瘍に対する薬物治療効果を検討した。オシメルチニブ耐性癌担癌マウスにSFK阻害剤を投与したところ、有意な腫瘍増殖抑制効果が観察された。一方、オシメルチニブ投与による腫瘍増殖抑制効果は観察されなかった。本結果より、第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブ耐性肺癌に対してSFKを標的とした薬剤が有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オシメルチニブ耐性株を駆使して、オシメルチニブ耐性に関与するSFK活性化のメカニズムとして、CDCP1の発現増加を提示することができた。さらに、動物実験系でSFK活性化オシメルチニブ耐性肺癌に対してSFK阻害剤が有効である可能性を示すことができ、これまでのin vitro系での検討と一致する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、オシメルチニブ耐性株でEGFRの発現低下及びSFK,CDCP1,AXLの発現増加を観察している。今後SFK、CDCP1及びAXLがそれぞれ如何に関連して細胞内シグナルを制御しているかについて、それぞれの役割及び相互作用について詳細に解析していく。すなわち各タンパク質の発現変動によるシグナルの変化や各タンパク質同士の結合などを検討し、SFKの活性化に焦点をあてながら明らかにしていく。 さらに、これまで樹立してきた第1世代、第2世代EGFR-TKI耐性細胞株を用いてSFK、AXL、CDCP1の薬剤感受性への関与を検討することによって、第1世代EGFR-TKIや第2世代EGFR-TKIに関しても共通に耐性に関連するか否かについて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
検討に用いた試薬類をこれまで所有していたものから使用したため購入時期にずれが生じた。次年度に当該年度中に購入予定としていたものを購入する。
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