研究課題/領域番号 |
19K07223
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
宮元 敬天 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (20619481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低体温療法 / バンコマイシン / テジゾリド |
研究実績の概要 |
体温管理療法の一つである低体温療法は心停止蘇生後に生じる脳障害を防ぐ有効な手段として高く評価されている。しかし低体温療法中には、治療に不可欠な薬物が有効濃度で標的臓器に到達するとは限らず、血液中の薬物濃度が高くなる傾向がある。臓器組織中の薬物濃度は薬効に大きな影響を与えるため、低体温療法中の薬物投与最適化は重要な課題である。そこで本研究では、低体温療法における抗菌薬の臓器組織中の薬物濃度に影響を及ぼす要因の中でも特に重要な、臓器組織への薬物移行が変化するメカニズムを解明することを目標にしている。 今年度は今まで解析を進めてきたバンコマイシンの体内動態について主に組織中濃度の解析を進め、臓器組織によって低体温の影響が異なることを明らかにしている。特に排泄臓器である腎臓への移行性が大幅に変わることから、そのメカニズムについても解析を進めている最中である。 さらに今年度は抗MRASA薬の1つであるテジゾリドを評価対象薬物とし、低体温時における体内動態について解析を進めた。テジゾリドは体内で分解し薬効を有する薬物が生じる性質を持っているため、体温変化時における分解割合の変化についてin vitroの実験系より解析し、温度低下の影響を受けないことを明らかにした。また、静脈内投与後の体内動態についても解析を進め、低体温時に血漿中薬物濃度が上昇する傾向が見られた。テジゾリドの血漿中薬物濃度については親化合物および分解物の両方の濃度が重要であり、両者を同時に分離分析する手法を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析予定薬物であったテジゾリドの体内動態解析に着手し、予備データを含め体内動態変動要因の一部が明らかになってきている。また、これまで解析を進めてきたバンコマイシンについても組織中濃度の変化などが明らかになっており、薬物の体内動態特性に応じて低体温の影響が異なることが示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はテジゾリドの体内動態について血漿中薬物濃度のみならず、胆汁排泄や尿中排泄についても解析を進めていく予定である。また、組織中濃度についても解析を行い、体内動態変動要因の推定および解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大によって予定していた学会出張などがなくなり残金が生じることとなった。 次年度における物品費として使用予定である。
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