本研究は臨床のみならず,医薬品・化粧品開発においても注目を集めている薬剤性光線過敏症について,その発症機序に基づく光安全性評価法の確立ならびに本副作用の低減・回避方法の戦略的創出を目指すものである.2014 年に施行された医薬品開発における光安全性評価に関するガイドラインでは (1) 医薬化合物の光反応性および (2) 医薬化合物の皮膚移行性が重要なリスクファクターと示されている.しかしながら,本ガイドラインでは光反応性あるいは光毒性を評価する in chemico/in vitro 試験のみが推奨試験法と記載されているのみである.これらの結果は生体における光毒性反応と必ずしも相関するわけではないため,その他の発症機序,特に皮膚曝露を加味した体系的な評価フローの構築が必要である.そこで本研究では光毒性の発症機序である化学物質の光反応性および皮膚内動態評価を基盤とし,特に動物実験に依存しない光安全性評価系の開発を目指す.本年度の実験では,ラット皮膚の代替として人工膜を用いたin vitro 皮膚透過性の構築を行い,ROS assay と本方法を組み合わせることで動物実験に依存しない化合物に対する光安全性評価系の構築を目指した検討を実施した.今回選択した被験物質について ROS assay による光反応性のデータと皮膚透過性試験から予測した皮膚曝露を組み合わせることで,被験物質の in vivo 光毒性と関連性のある予測を得ることができ,良好な予測精度を有していることが明らかとなった.
|