研究課題
昨年度までの研究実績において、我々は、乳腺上皮細胞がノルエピネフリン(NE)を合成し、母乳中へ分泌していることを明らかにしてきた。これまでに、NEを合成するいくつかの組織・細胞は、NEトランスポーター(NET)を発現していることが分かっている。このことから、乳腺上皮細胞にもNETが発現している可能性が高いと考えられるが、ヒトを含めた全動物種において、乳腺上皮細胞におけるNETの発現に関する報告はない。今年度は、乳腺上皮細胞におけるNETの発現と機能特性について評価を行った。始めに、3つのヒト乳腺上皮細胞(正常ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)、MCF-10A、MCF-12A)を用いて、リアルタイムPCR法およびウェスタンブロット法によりNET発現の有無を調べた。その結果、全ての細胞において、NETのmRNAおよびタンパク質発現が確認された。次に、乳腺上皮におけるNET発現の局在を調べるために、授乳期10日目のCD1マウスから採取した乳腺上皮切片を用いて、NETの免疫蛍光染色解析を行った。その結果、NETは、乳腺上皮のアピカル側(母乳側)に発現していることが明らかとなった。さらに、NETの輸送特性を調べるために、NET siRNAを導入したHMECを用いて、20μMのNEを含む培地で10分間処理した際の細胞内NE量を調べた。NET siRNAを導入したHMECの細胞内NE量は、コントロールsiRNAを導入したHMECに比べて有意に高いという結果が得られた。この結果から、HMECに発現するNETは、細胞外のNEを細胞内に取り込む機能を有していることが分かった。以上の結果から、乳腺上皮細胞に発現するNETは、アピカル側の細胞膜に局在しており、このNETは母乳中のNEを細胞内に取り込む機能を有していることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
一般社団法人北海道薬剤師会 道薬誌
巻: 39巻 4月号 ページ: 7-11
巻: 39巻 5・6月合併号 ページ: 20-24
Int Breastfeed J
巻: 17 ページ: 1
10.1186/s13006-021-00436-7