研究実績の概要 |
薬物代謝酵素は体内における薬物の分解を担い、薬効や有害作用の発現を調節する酵素群である。その活性には男女差・雌雄差が存在する。本研究は薬物代謝酵素の活性に性差が生じる原因を明らかにし、性差およびその変動に起因する薬物の有害作用、薬物間相互作用の予測に役立つ情報を明らかにすることを目的としている。本年度はマウスを用いた解析を行い、肝臓においてメス特異的に発現するマウスCyp3a41の調節に関わる核内受容体の活性調節機構の一端を明らかにした。 CYP3A遺伝子はHNF4αやVDRにより調節される。両核内受容体はリン酸化による活性調節を受け、それにより標的遺伝子であるCYP3A遺伝子の発現に影響を与える。核内受容体には核内受容体間で高度に保存されたリン酸化部位が存在し、共通の調節機構となっていると予想される。HNF4αのDBDにおける保存されたリン酸化部位であるSer68、Ser75、Ser76は、リン酸化によって転写活性化能が低下することが、模擬リン酸化変異体を用いたレポーター遺伝子解析によって示唆された。同様にVDRではDBD内のThr32、Thr40、LBD内のSer335のリン酸化によってビタミンD依存的転写活性化能が低下すること示唆された。臨床において男女別の投与量が推奨されているピオグリタゾンをリガンドとするPPARγにおいても、DBD内のSer392のリン酸化によるリガンド依存的転写活性化能の低下が示唆された。 本研究では性差が生じる一因としてmicroRNAの関与に注目している。性特異的発現を示すCyp3a41a, 3a41b, 3a44, 2a4, 2d9 mRNA及び上記のリン酸化に関わる可能性のあるキナーゼmRNAについて、ウェブ上のmicroRNA結合部位予測サイトを用いmicroRNAによる調節の可能性を探索したところ、VDRについて1つ候補が挙がった。
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