研究課題/領域番号 |
19K07228
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
佐久間 勉 奥羽大学, 薬学部, 教授 (30250468)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 性差 |
研究実績の概要 |
薬物代謝酵素は体内において薬物や毒物など様々な化学物質の構造変換を担い、薬理作用や有害作用の発現やその程度に影響を及ぼす酵素である。その活性には雌雄差が存在する。本研究は薬物代謝酵素の活性に雌雄差が生じる原因を明らかにし、その変動に起因する生体影響の解明を目的としている。本年度もマウスを用い肝臓においてメス特異的に発現するCyp3a41, 3a44遺伝子の解析を進めた。 Cyp3a遺伝子発現に性差が生じる一因としてmicroRNAに注目し、令和3年度のデータベース検索により性差に関与する可能性のあるmicroRNAが複数候補に挙がった。それらには直接CYP3A mRNAを標的にするものとCyp3a遺伝子発現の調節に関わる転写因子HNF4αを標的にするものが含まれた。そこで機能のレベルでそれらによる調節を解析するため、レポーター遺伝子アッセイを利用した評価系と安定発現細胞株を利用した評価系の構築を進めた。 前者はpmirGLO dual-luciferase miRNA target expression vector を用いレポーター遺伝子アッセイ用プラスミドの構築を行った。CYP3A41, 3A44 mRNA解析用として3’ 非翻訳領域全長を含むプラスミドを構築した。HNF4α mRNA解析用には6種類の異なる範囲の3’非翻訳領域を含むレポータープラスミドを構築した。今後それらのプラスミドを用い、mRNA上の標的配列並びに機能的なmicroRNAの同定を進める。後者の評価系を作製するためpTarget mammalian expression vector を利用しCYP3A41および3A44 mRNAを発現させるプラスミドを構築した。プラスミドはそれぞれについて3’ 非翻訳領域を含むものと含まないものを作製した。今後培養細胞にそれらを導入し安定発現株を樹立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和4年度も新型コロナウイルス感染症拡大に伴う各種の制限が継続され研究の進行が遅れた。令和3年2月と令和4年3月に起こった大地震による研究室の被害も甚大であった。研究室内の実験環境はかなり回復したが、例えば超遠心分離機は利用できない状態が続いているなど、重要な機器の一部に未回復なものがあり遅延の一因となっている。 遺伝子組換えによる解析用プラスミドの構築に困難があり、遂行の障害となっていた。実験系の詳細な見直しによって原因の一部は特定され解決した。しかしまだ未解決の問題が残っており進行遅れの大きな要因となっている。この問題解決に向け本年度も努力を続ける。 本研究ではマウス遺伝子発現の解析に肝細胞初代培養系を用いる。しかし代表者が使用しているプロトコルでは遊離肝細胞回収率が不安定で、これも研究進行遅延の一因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う各種制限が緩和される事が予想されるため、研究のスピードアップが期待される。大地震による被害は大部分が回復したが、高額な機器が回復していない。そこでそれら機器を使用しない別の実験方法で解析できないか検討する。 本研究ではマウス初代培養肝細胞を用いるが、その回収率の低さも課題となっていた。本年は時間をやり繰りし比較的回収率の良い季節に実験を集中させる。令和5年度は4年度に構築したプラスミドを候補となったmicroRNAの前駆体と共にマウス初代培養肝細胞にトランスフェクションし、レポーター遺伝子アッセイを行うことにより mRNA上の標的配列並びに機能的なmicroRNAの同定を進める予定である。マウス初代培養肝細胞での解析が難しい場合は株化細胞の利用を進める。安定発現株用に作製したプラスミドを用い安定発現株を樹立した後には、発現細胞にmicroRNA前駆体をトランスフェクションしmicroRNAの影響を解析する予定である。CYP3A41, 3A44発現の解析には簡便に実施できる試験系を利用し迅速に評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況に記した様に、研究の進行が遅れているために次年度使用が生じた。令和5年度にはマウス初代肝細胞系の利用時期の調整、代替細胞系の利用、遺伝子組換え実験の障害解消により進捗の遅れを取り戻す予定である。そのため使用計画内訳に大きな変化はない。
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