本研究では、臨床的課題である抗がん剤誘発性悪心・嘔吐の更なる改善に繋げることを目的に、非定型抗精神病薬のドラッグ・リポジショニングとその機序解明を目指している。 2021年度は、マウス専用とラット専用の摂餌量測定装置を用いて、抗がん剤誘発性悪心・嘔吐の代償行動であるパイカ行動(カオリン摂餌量)を主要評価項目とする動物実験を継続した。副次的評価項目は通常食摂餌量、飲水量及び活動度とした。本研究では摂食量、飲水量及び活動度の同期的変化を測定する新たな測定装置を構築して、より詳細な行動変化及び概日リズム発現までを解析可能とした。 DBA/2雄マウス(6週齢)にシスプラチン12.5 mg/kgを腹腔内投与し、7日間のカオリン摂餌量を測定した。シスプラチン単独投与群は生理食塩水群と比較して、day3にカオリン摂餌量の有意な増加がみられた。比較対照群として、シスプラチン投与前に、オランザピン、アセナピン、ミルタザピンあるいは標準制吐療法(グラニセトロン、ホスアプレピタント及びデキサメタゾン)を予防投与した結果、非定型抗精神病薬群のカオリン摂餌量は標準制吐療法群と比較して、有意に増加しなかった。 一方、Wistar雄ラット(7週齢)にシスプラチン6 mg/kgを腹腔内投与し、5日間のカオリン摂餌量を測定した。シスプラチン単独投与群は、day1~3にカオリン摂餌量の増加がみられた。引き続き、マウス同様に制吐候補薬の予防投与実験を継続中である。
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