研究課題/領域番号 |
19K07231
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
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研究分担者 |
黒澤 俊樹 帝京大学, 薬学部, 助教 (90839466)
手賀 悠真 帝京大学, 薬学部, 助教 (50809043) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / ヒトiPS細胞由来脳毛細血管内皮細胞 / トランスポーター / トランスウェル2次元培養 / 方向性輸送 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はヒトiPS細胞由来脳毛細血管内細胞(hiPS-BMECs)をトランスウェルデバイスに搭載したin vitroヒト血液脳関門(BBB) modelがヒトBBBの機能を解明する実験装置になることを検証することであった。そのために、2020年度は 1) hiPS-BMECsを介した輸送機能が検出可能であるか、また、2)脳からの排出輸送が本BBBモデルで検出可能かを検討した。その結果、以下の成果が得られた。 1)単純拡散機構で膜を透過するアンチピリンの血液側から脳側(A-to-B)方向の輸送速度は、その逆方向(B-to-A)と同等であった。一方で、カチオン性アミノ酸トランスポーターCAT1の基質アルギニン、SLC35F2の基質YM155の輸送速度は、脳への取り込み方向(A-to-B方向)が優位であった。また、MCT1基質である乳酸の透過において、プロトン勾配依存的経細胞輸送が観察された。さらに、BCRP基質のプラゾシンとダントロレンにおいて、脳からの排出方向(B-to-A方向)優位な輸送が検出された。以上の方向性輸送はいずれも阻害剤存在下で阻害された。以上から、hiPS-BMECsを搭載した実験装置はトランスポーター介在性の方向性輸送を検出できる優れたヒトBBBモデルになる可能性が示唆された。 2)次に、本実験装置が薬物の輸送機構解明に適しているかを検証するために、6-メルカプトプリン(6-MP)をモデル薬物として検討を加えた。申請者は6-MPが脳から積極的に排出される薬物であることを動物実験で明らかにしている。6-MPのB-to-A方向の輸送速度はA-to-B方向に比べて約2倍以上大きいことが観察された。また、一連の阻害実験、分子生物学的実験から、細胞内への取り込み輸送にENBT1が、細胞内からの排出輸送にMRP5が関与することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画の80%が完了した。本年度はhiPS-BMECsを介した輸送機能に焦点をあて期待通りの成果を得ることができた。また、6-メルカプトプリンのBBB輸送に関わるトランスポーターを同定することができた。一方で、脳からの排出方向の輸送について詳細に特徴付ける予定であったが、これについては次年度に検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は次の実験を行う。①hiPS-BMECsのP-糖タンパク質(ABCB1)発現量を増やすために、未分化iPSの段階あるいは分化・誘導中の細胞にレンチウィルスベクターを用いてABCB1遺伝子を導入し過剰発現系を作製する。この実験系については、既に川端博士が行っており、それを応用する。②ペプチドのレセプター介在性輸送機能の検証する。hiPS-BMECsにトランスフェリンレセプター、インスリンレセプター、レプチンレセプター、LRP-1の遺伝子が発現していることを掴んでいるが、機能については不明である。それぞれのリガンドペプチドあるいは安定型ペプチドを用いてトランスサイトーシスを解析する。測定はELISAあるいはLC-MSMSシステムを用いて行う。③脳への高分子ドラッグデリバリーに関する検討を行う。当初予定していた環状ペプチドDNP(J. Control. Release, 262, 232(2017))を用いて予備検討をしたが、hiPS-BMECsでの透過は認められなかった。そこで本研究ではペプチド核酸の脳へのデリバリーの可能性について検討することを目的に、プロトン-カチオン交換輸送系の基質ピリラミンに長さの異なるPNAを結合した化合物を合成し、本ヒトBBBモデルを用いた透過実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあって、実験時間を十分にとれなかった。そのため、上記の次年度使用額が発生した。当初の計画の内、脳からの排出方向の輸送のキャラクタりぜーションは残されている。上記の次年度使用額は、翌年度配分額と併せてこの実験に使用する予定である
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