研究課題
心原性脳塞栓症の予防に使用される活性型血液凝固第X因子 (第Xa因子) 阻害薬は、添付文書に記載されている用法・用量に準じて投与しても出血症状が高頻度で認められることが問題になっている。本研究目的は、第Xa因子阻害薬の体内動態の制御機構と体内動態に対する組織の寄与を薬物速度論的手法や母集団薬物速度論的手法、薬物動態関連遺伝子解析により解明し、第Xa因子阻害薬の適正使用の実践に必要な情報を収集することである。研究最終年度である令和三年度においては、以下の知見を得た。(1) リバーロキサバン内服患者における乳癌耐性タンパク質 (BCRP) を介した薬物間相互作用に関する速度論的解析:文書にて同意を取得した患者を対象に、薬物排出トランスポーターであるBCRPの基質や阻害薬となる薬物の併用がリバーロキサバンの体内動態に及ぼす影響について、母集団薬物速度論的手法を用いて解析した。その結果、検討したBCRPの基質や阻害薬を併用してもリバーロキサバンのクリアランスに影響を及ぼさないことが示唆された。(2) 生理学的薬物速度論に基づくアピキサバンの体内動態評価:ヒト結腸癌由来細胞 (Caco-2細胞) におけるアピキサバンの経細胞輸送実験結果と文献値を用いて、アピキサバンに関する生理学的薬物速度論モデルを構築し、ヒトにおける第Xa因子阻害薬の体内動態に対するP-gpやBCRPの寄与を予測した結果、アピキサバンの排泄にはP-gpやBCRPが大きく関与しており、P-gpの寄与はBCRPと同程度であること、また、ヒトにおけるアピキサバンの体内動態を予測するには、P-gpやBCRPの寄与を考慮する必要があることが示唆された。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 1件)
Pharmacology Research & Perspectives
巻: 9 ページ: e00883
10.1002/prp2.883
International Journal of Pharmaceutics
巻: 609 ページ: 121185
10.1016/j.ijpharm.2021.121185