研究課題/領域番号 |
19K07235
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
竹林 裕美子 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (50805299)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂肪幹細胞 / トランスポーター / 腎障害 |
研究実績の概要 |
我々は、間葉系幹細胞が障害を受けた組織に集積する作用を利用し、脂肪幹細胞に薬物を封入させ障害組織に送達させる、ドラッグデリバリーシステムとして脂肪幹細胞を利用することを想定・目的としている。しかし、脂肪幹細胞への薬物移行性並びに薬物が取り込まれた後の細胞内挙動に関する情報は非常に少なく、さらに、薬物トランスポーター介在性輸送が、脂肪幹細胞にも存在するかは不明である。本研究では、ヒト脂肪幹細胞への腎保護作用を持つ薬物の封入性を高めるため、ヒト脂肪幹細胞における薬物の輸送機構を分子レベルで解明する。2019年度は、ヒト脂肪幹細胞における薬物トランスポーターの発現解析についてリアルタイムPCR法を用いて検討し、トランスポーター介在性輸送の分子機構について調査を進めた。 まず、ヒト脂肪幹細胞に発現が報告されているグルコーストランスポーターGLUT1および尿酸排出トランスポーターBCRPについて検討を行ったところ、既報と同様、両トランスポーターのmRNA発現が観察され、本実験系が適切であることを確認した。次に、発現解析が未着手であるトランスポーター群について解析を進めた。有機カチオントランスポーター群では、OCTN1およびOCTN2 mRNAの明確な発現が確認されたが、OCT1、OCT2およびOCT3 mRNAは確認できたものの低レベルであった。また、有機アニオントランスポータOAT1、OAT2、OAT3およびOAT4 mRNAに関してはほとんど検出限界以下であった。 以上の結果から、ヒト脂肪幹細胞において、各種トランスポーターmRNA発現量に顕著な差があることが明らかとなった。しかし、タンパクレベルでの種々トランスポーター発現の確認ができていないため、トランスポーター発現・機能の可能性を明らかにするためにはさらなる解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は初年度であるため、ヒト脂肪幹細胞の入手先や培養条件および継代数など、研究を開始するにあたり確認・精査しなければならない項目が多く、想定していた当初の実験計画からは幾分遅れが生じた。実験開始後、ヒト脂肪幹細胞の増殖特性を十分に把握することができ、ヒト脂肪幹細胞に発現しているトランスポーターのmRNA解析は順調に進めることが出来ている。一方、機能発現が予測されるトランスポーターのタンパクレベルでの発現および脂肪幹細胞の継代数による発現変化などを今後検討していく必要があり、研究課題の進捗状況としては上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究において見い出された、ヒト脂肪幹細胞に発現するトランスポーターの機能発現解析を中心に進めていく。明確なmRNAの発現が認められたGLUT1、BCRPおよびOCTN1、OCTN2については、ウエスタンブロットおよび免疫染色解析などを行い、タンパクレベルでの発現および細胞内局在性を確認する。タンパクレベルでの発現が確認されたトランスポーターの情報を精査することによって腎保護作用を有する薬物のターゲットを絞り、脂肪幹細胞における種々薬物の取り込み実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は脂肪幹細胞におけるトランスポーターのタンパクレベルでの発現確認を着手できておらず、次年度でウエスタンブロットおよび免疫染色解析にかかわる抗体および試薬の購入費用の支払いにあてる。また、取り込み実験を行うにあたって、放射性同位元素で標識されたトランスポーター基質を購入する予定である。
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