研究課題/領域番号 |
19K07239
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 俊介 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (40444525)
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研究分担者 |
久本 芽璃 北海道大学, 歯学研究院, 学術研究員 (00754920)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 呼吸器 / M細胞 / 粘膜免疫 / iBALT / 慢性閉塞性肺疾患 |
研究実績の概要 |
呼吸器や消化器は多くの外来抗原や微生物と接する。これらの異物に対する個体防御のため、粘膜組織は高度な免疫システムを備え、生体恒常性の維持に貢献する。免疫システムの誘導装置として機能するパイエル板などのリンパ組織は、絶えず外来抗原をモニターし抗原特異的IgAの産生を行う。こうした免疫監視が正常に機能するためには粘膜上の抗原が上皮を越えて、リンパ濾胞に取り込まれる必要がある。そのためリンパ濾胞を覆う濾胞上皮にはM細胞と呼ばれる特殊な上皮細胞が存在し、粘膜面に存在する抗原を取り込み、トランスサイトーシス経路を通して上皮下の樹状細胞に受け渡す役割を担う。 近年の研究から腸管におけるM細胞の解析が進み、腸管におけるリンパ濾胞成熟、IgA産生、感染症におけるM細胞の重要性が明らかになってきている。一方で、 呼吸器におけるM細胞の理解は不十分である。申請者は正常、病理的な条件下で気管・気管支におけるM細胞の探索を行い、呼吸器M細胞の性状解析、および分化機構の解明を目的とした。 これまでの研究から、気管、気管支にM細胞が存在すること、病理的な条件でこの呼吸器M細胞が増加することを明らかにしてきた。そこで、当該年度では呼吸器M細胞の分化機構の解明を目的とした。免疫組織化学的解析、および単一細胞RNAseq解析を行い、その結果、呼吸器上皮においてM細胞の前駆細胞となる細胞が存在する可能性を新たに見出した。この前駆細胞を特定することで、今後、呼吸器上皮M細胞を特異的に欠損するマウスの作成が可能になる。これにより、呼吸器M細胞の機能解明につながると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究から、呼吸器M細胞の分子マーカーを見出した。これにより、呼吸器M細胞の解析が進み、分化誘導因子を明らかにすることができた。in vitro、in vivoにおけるM細胞の人工的な分化誘導系の開発に成功し、この実験系を用いて、呼吸器上皮細胞を構成する細胞の中にM細胞前駆細胞となる細胞が存在することが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
呼吸器M細胞の前駆細胞を同定し、その情報をもとに呼吸器特異的M細胞欠損マウスを作成する。このマウスを用いて、呼吸器疾患モデルを作成し、呼吸器疾患におけるM細胞の役割を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19が原因で研究が実施できる期間が短かったため。さらに購入予定であったプラスチック消耗品、試薬、マウスなどの購入が遅れたため。また学会もWeb開催となり旅費を使用する機会がなかった。 最終年度は、M細胞前駆細胞の同定のための遺伝子改変マウスの開発などで、繰越分を使用する計画である。
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