研究課題/領域番号 |
19K07240
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
下田 浩 弘前大学, 医学研究科, 教授 (20274748)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 立体組織 / 微小循環系 / 血管網 / リンパ管網 / 生体移植 |
研究実績の概要 |
細胞集積法により構築した血管網またはリンパ管網内蔵ヒト立体組織をヌードマウス皮下に移植し、移植後1日から14日かけて経時的に分子形態学的解析を行った。 血管網内蔵立体組織の移植では、宿主と移植組織双方より血管新生が生じ、両者が融合することにより移植後数日で血流を有する新たな微小血液循環路が生じ、生体への適合を示すことが前年度から今年度にかけて明らかになった。その分子メカニズムについて現在解析を進めている。 これに対し、リンパ管網内蔵ヒト立体組織は、血管網内蔵組織と同様に移植しても宿主および移植組織からのリンパ管新生に乏しく、前年度までは移植組織内のリンパ管網が退化することにより宿主と移植組織間に新たなリンパ循環路の形成が得られなかった。このため、今年度は立体組織の作製方法ならびにリンパ管成長因子の徐放性投与と循環路形成のための足場の提供を中心とした移植方法について改良を行った。様々な条件を検討し、移植組織のリンパ管網の維持と移植組織および宿主からのリンパ管新生を誘導することに成功した。その移植後14日では、ヒト移植組織と宿主マウスの新生リンパ管は組織内で接触後、双方の内皮細胞の接着が緩くなり、互いの細胞が侵入と接触を繰り返すことで互いの内皮細胞がモザイク状に融合した新たな脈管を形成していくことが明らかになった。これについて現在、さらに詳細な解析を行うとともに、その分子発現について検討を進めている。 しかし、当該動物実験施設の改築工事の遅延による施設の使用制限、ならびに立体組織作製に必須となる培養器具と試薬が今年度よりコロナ禍のために調達できなくなっているために研究の進行が計画より遅れている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該動物実験施設の改築工事の遅延による施設の使用制限、ならびに立体組織作製に必須となる培養器具と試薬が今年度よりコロナ禍のために調達できなくなっているために研究の進行が計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究進行遅延の原因の一つであった動物実験施設の改築工事は次年度(2021年度)初めに終了予定であり、動物実験は今後推進してくことが可能である。また、コロナ禍による立体組織作製に必須となる培養器具の調達不可については、製造工場閉鎖等のため未だ回復の見込みが立っていないが、代替品による立体組織の試作を既に行っており、従来の立体組織に近い組織が作製できるところまで到達している。 以上のように研究の遅れの原因は解消される方向にあり、今後の研究推進は可能と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該動物実験施設の改築工事の遅延による施設の使用制限、ならびに立体組織作製に必須となる培養器具と試薬が今年度よりコロナ禍のために調達できなくなったために研究に遅れが生じていることが研究費の次年度利用額が生じた理由である。次年度使用額は今年度計画の遅れに相当するところである。 しかし、研究の遅れの原因は前項に挙げたごとく、解消される方向にあることから次年度請求分をもって当初の研究計画に復することが十分期待できる。
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