研究課題/領域番号 |
19K07242
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 和裕 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (10327835)
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研究分担者 |
川崎 平康 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 研究員 (00363268)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 赤外顕微鏡 / ポリグルタミン |
研究実績の概要 |
本研究課題においては、神経細胞内で凝集するポリグルタミンの原子間の結合(C=O, O-H, N-H)を赤外顕微鏡で調べて、ベータシート構造の原子間の結合状態を把握することが目的である。研究代表者と分担者は過去の研究において、フィブリル化したアミロイドベータとフィブリルを解離させたアミロイドベータの波数3000-4000の範囲の赤外顕微鏡データの波形を観察し、解離後の構造体のO-Hと解離前の構造体のO-Hを反映するピークが波数3200-3500の範囲に異なるピークを持って存在することを見出した。ポリグルタミンにおいても同様のピークの違いを示すかどうかを調べるために、同様の波数の範囲での赤外顕微鏡解析を行った。69個グルタミンが連続したポリグルタミンペプチド(100 ug/ml)は水溶液中で凝集体を形成するため、中赤外光を照射して凝集を解離させたものと解離前のものを比較することを行った。5.0, 6.0, 7.0ミクロンの波長の光を照射したものは何れの波長でも照射前のものに比べて、スペクトルが高波数側に広がっていた。これは、水素結合の解離を反映するものとして矛盾ないと思われる。したがってベータシート構造を有するポリグルタミンのポリペプチド主鎖間の水素結合の状態を、上記方法により解析できると判断した。研究代表者と分担者は過去の研究において、ポリグルタミンペプチドのアミド1領域(波数1650付近)の変化は5.5ミクロンと6.0ミクロンの波長の照射で異なることを見出した。今回の波数3200-3500付近の照射後の変化とアミド1領域の変化の照射波長特異性を比較検討する必要がある。また、ポリグルタミンはミクログリア細胞の形態を変化させることを見出したため、ポリグルタミンを内部に持つ細胞として神経細胞以外にミクログリアも使用し、赤外顕微鏡解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、1年目、2年目にポリグルタミンを内部に持つ培養細胞とポリグルタミンを強制発現させたマウス脳を研究試料として、赤外顕微鏡解析を行う予定としていた。本年度は解析方法の確立を行った。凝集および凝集解離後のポリグルタミンペプチドを用いて、赤外顕微鏡データを取得し、異なるピークを持つことを確認したことで、今後の細胞および脳切片を用いた解析を可能とした。しかし、細胞を用いた解析まで進んでいないので当初のスケジュールよりもわずかに遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、最初にポリグルタミン凝集体を導入した培養細胞を赤外顕微鏡解析に用いる。69個グルタミンが連続したポリグルタミンペプチドを培養細胞のメディウムに添加すると(最終濃度10 ug/ml)、自発的に細胞内に侵入することがわかっているため、この方法により導入を行う。次にマウスの脳切片を赤外顕微鏡解析に用いる。使用するマウスは代表者が作成した、グルタミン69個の反復配列をL7プロモーター支配下で小脳プルキンエ細胞特異的に発現させたトランスジェニックマウスである。このマウスでは高度なプルキンエ細胞の変性脱落が認められ、プルキンエ細胞内にポリグルタミン凝集体を認める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、1年目に細胞を試料とした赤外顕微鏡解析まで行う予定であったが、予定より遅れ、測定系の開発までしか終わらなかったため、予定額を使い切ることができなかった。2年目は細胞とマウス脳切片の解析を行う予定であるため、1年目の残り分と2年目予定金額を使用する予定である。
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