研究課題/領域番号 |
19K07242
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 和裕 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (10327835)
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研究分担者 |
川崎 平康 東京理科大学, 加速器研究施設, 特別技術専門職 (00363268)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポリグルタミン / 赤外自由電子レーザー |
研究実績の概要 |
本研究課題においては、アミロイドベータと同様に凝集する性質を有するポリグルタミンの原子間の結合(C=O, O-H, N-H)を赤外顕微鏡で調べて、ベータシート構造の原子間の結合状態を把握することが目的である。実験試料として69個グルタミンが連続したポリグルタミンペプチドを用いていたが、このペプチドは特異な立体構造を持つため安定的に合成し、精製することが困難であることが判明した。したがって、69個の反復よりも短い15個反復のポリグルタミンペプチドを凝集させる実験条件を探した。その結果、37度で震盪させることにより、十分に凝集することを見いだした。したがって、今後、15個反復のポリグルタミンペプチドを凝集させたものを解析に使う目処がついた。また、研究代表者が近年出した論文において、アミロイドベータがベータシート構造をとったものが、分子間で水素結合を形成し、特定の波長の中赤外光照射により、水分子が水素結合に干渉し、ベータシート構造の割合が減少し、結果として凝集が解離したということに矛盾しない実験データを得た。中赤外光照射後のポリグルタミン凝集体のベータシート構造の分子間水素結合の状態をコンピューターシミュレーションで調べることを予定しているが、その基礎データをとるために、昨年度は、アミロイドベータに中赤外光を照射したときの分子間結合の変化に対する水分子の寄与をコンピューターシミュレーションで調べた。その結果わかったことは、レーザー光の各パルスで分子間水素結合は破壊され、照射後自発的に水素結合の再結合が起きる。しかし、水分子がその結合ギャップに入り込んだら再結合を阻害した。この結果はポリグルタミン凝集体でのコンピューターシミュレーションの基礎データとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、1年目、2年目にポリグルタミンを内部に持つ培養細胞とポリグルタミンを強制発現させたマウス脳を研究試料として、赤外顕微鏡解析を行う予定としていた。しかし、培養細胞に導入する69個グルタミンが連続したポリグルタミンペプチドは特異な立体構造を持つため安定的に合成し、精製することが困難であることが判明した。しかし、今回15個反復のポリグルタミンペプチドを凝集させたものを解析に使う目処がついた。しかし、照射施設が感染により長く入構禁止となっていたため、実験が制限され。ポリグルタミンを強制発現させたマウス脳を研究試料に用いた解析まで進んでいないので当初のスケジュールよりもわずかに遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、最初に15個反復のポリグルタミン凝集体を導入した培養細胞を赤外顕微鏡解析に用いる。ポリグルタミンペプチドを培養細胞のメディウムに添加し、細胞内に導入する。次にマウスの脳切片を赤外顕微鏡解析に用いる。グルタミン69個の反復配列をL7プロモーター支配下で小脳プルキンエ細胞特異的に発現させたトランスジェニックマウスを用いる。このマウスでは高度なプルキンエ細胞の変性脱落が認められ、プルキンエ細胞内にポリグルタミン凝集体を認める。このマウスの凍結脳切片をクリオスタットで作成する。プルキンエ細胞は大型の細胞であり、染色なしでも輪郭が明瞭であるため、解析部位を同定する事が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、2年目に細胞およびマウス脳切片を試料とした赤外顕微鏡解析まで行う予定であったが、予定より遅れ、ペプチドまでしか終わらなかったため、予定額を使い切ることができなかった。3年目は細胞とマウス脳切片の解析を行う予定であるため、2年目の残り分と3年目予定金額を使用する予定である。
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