中腎管(将来の精巣上体、精管、精嚢)と中腎傍管(将来の卵管、子宮、膣)は、胎生期に雌雄同様に形成され、雄では中腎管が分化して中腎傍管が消失し、雌では中腎傍管が分化して中腎管が消失する。我々は、中腎傍管で特異的にCxxc5を欠損させた雄マウスが不妊になることを発見した。昨年度までに、生殖不能な中腎傍管特異的Cxxc5欠損雄成獣マウスでは、精管と精嚢の分岐部にある精管膨大部腺が過形成になり、これが不妊の原因であることを明らかにしてきた。精管膨大部腺がどのように形成されるのか情報が乏しいため、今年度は、正常な精管膨大部腺がいつどのように形成されるのか明らかにすることを目的とした。 中腎管特異的CreマウスにレポーターアレルR26R-LacZを導入し、中腎管の細胞を追跡することで、経時的に中腎管から精管、精嚢、精管膨大部腺が形成される過程を形態学的に解析した。胎齢16.5日胚から生後2か月の雄マウスについて、Whole LacZ染色を実施した。胎齢16.5日では、中腎管下端の肥大化がみられ、中腎管下端肥大部の上端から精嚢が分岐し始めた。次第に中腎管下端肥大部が精管と精嚢に分離し精嚢が伸長した。新生児になると中腎管下端肥大部は消失して精管と精嚢が明瞭に分離し精嚢の腺構造が顕著になった。精管膨大部腺については、生後3日目頃に精管精嚢分岐部よりやや上部の精管から肥厚部が出現した。生後14日頃には精管膨大部腺の腺構造が明瞭化した。これらの結果より、精管膨大部腺は、中腎管下端の肥大化と、精管・精嚢の分離を経た後、生後3日頃に形成され始めることが分かった。本研究で中腎管の分化過程を明らかにできた。中腎傍管特異的Cxxc5欠損雄マウスの形態異常は、中腎傍管伸長途中停止が発端なので、今後は、中腎傍管が中腎管の分化にどうかかわってくるのか、明らかにしたい。
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