研究課題/領域番号 |
19K07247
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
竹林 公子 (鈴木) 広島大学, 両生類研究センター, 研究員 (00397910)
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研究分担者 |
鈴木 厚 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (20314726)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経誘導 / 頭部形成 |
研究実績の概要 |
ダウン症は21番染色体がトリソミーになる先天異常で脳形成不全を示すが、その発症機構は不明であり有効な治療法も確立していない。研究代表者は両生類のメリットを活かしたスクリーニング法により、BMPシグナルを抑制して神経を誘導するBiz/Zbtb14を単離し、Biz/Zbtb14がWntシグナルを促進して後方神経を形成することを見出した。さらに、ヒト21番染色体上のBiz結合因子 (Biz associated protein, Bap)が、Biz/Zbtb14と協調的に働いて神経誘導を促進することを発見している。これらの遺伝子は全前脳胞症の原因遺伝子座にも位置するため、胚発生期の神経形成を調節して、ダウン症と全前脳胞症の病態に寄与している可能性が高い。本研究では、神経形成におけるBapとBiz/Zbtb14の機能的な相互作用と生理機能を解析し、ダウン症と全前脳胞症の発症メカニズムを解明することを目的とする。 昨年度までに、ツメガエルL、S各染色体由来のBap遺伝子を同時に翻訳阻害することが期待できるモルフォリノオリゴを作製し、Bapの機能阻害実験をおこなった。その結果、後方神経マーカーhoxb9の発現が低下していることを明らかにした。令和2年度は、この機能阻害実験が特異的に行われていることを確認するために、モルフォリノオリゴと一緒に、モルフォリノの標的配列を持たないネッタイツメガエルBap遺伝子を同時に顕微注入してhoxb9の発現低下がレスキューされることを確認した。さらに、使用したモルフォリノオリゴとmRNAをin vitro 翻訳実験に用いて、翻訳阻害が起きているかについても確認した。以上の結果から、Bapが初期発生過程の神経形成に必要であることが明確に示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、神経形成におけるBiz/Zbtb14とBiz結合因子 (Biz associated protein, Bap)の機能的な相互作用、およびBMP・Wntシグナルネットワークに対する作用機序を解析し、ダウン症と全前脳胞症の発症メカニズムを解明することを目的としている。 令和2年度は、当初の研究計画通りBapとBiz/Zbtb14の過剰発現および機能阻害実験に関して一定の成果が得られており、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、BapとBiz/Zbtb14の協調作用機構を詳細に調べるため、既に作製済みのエピトープタグを付加したBapとBiz/Zbtb14を培養細胞に発現させた後、共免疫沈降法を用いてタンパク質間の結合を解析する。さらに計画以上に進展した場合は、各タンパク質のドメイン欠失変異体を用いて結合に必要な機能ドメインを同定し、BizとBapが作用する機序を生化学的に明確にする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や物品購入に満たない金額のため、次年度使用に回した。翌年度分として請求した助成金と合わせて試薬購入に充てる予定である。
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