研究課題/領域番号 |
19K07248
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
川合 克久 香川大学, 医学部, 助教 (80534510)
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研究分担者 |
荒木 伸一 香川大学, 医学部, 教授 (10202748)
江上 洋平 香川大学, 医学部, 講師 (80432780)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | macropinocytosis / macrophage / Rab GTPase |
研究実績の概要 |
本研究の解析対象であるマクロパイノサイトーシス様の新規輸送経路は次の特徴を示す。(1)取り込みの初期の段階でマクロパイノソーム様の構造から長い管状構造を形成する。(2)マクロパイノソーム様の構造のカップが閉じずに消滅する。これまでに我々は、マクロパイノソーム様構造および出芽した管状構造にはRab10が強く局在することを見出している。まず我々は、Rab10陽性新規輸送経路の形成条件について解析を行った。その結果、通常の培養条件下でのRAW264細胞(マウスマクロファージ)では、Rab10陽性新規輸送経路は低頻度にしか発生しなかった。PMA刺激を行うとRAW264細胞は従来型のマクロパイノサイトーシスを盛んに形成した。しかしながら、この時Rab10陽性新規輸送経路は低頻度にしか発生しなかった。PI3K阻害剤であるwortmaninnを前処理しPMA刺激した場合では、従来型のマクロパイノサイトーシスの形成は阻害された。一方、Rab10陽性新規輸送経路は高頻度に発生した。wortmaninn以外のPI3K阻害剤によっても同様の結果を得た。このことからPI3Kによって産生されるPI(3,4,5)P3が従来型の輸送経路とRab10陽性新規輸送経路の分岐をつかさどる鍵分子であることが示唆された。今後、PI(3,4,5)P3がどのように経路の調節を行っているかの解析を進めていく。 新規輸送経路により運ばれる分子の同定を行うことを目的に受容体(TLR、CD64、MHC classII)およびGPIアンカーなどの様々な膜成分をモニターするための蛍光ラベル融合体発現系を構築し、それらのRAW264細胞における発現を確認した。今後これらのツールを利用し、それぞれの分子がどの程度Rab10陽性新規輸送経路によって運ばれているのかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、Rab10陽性新規輸送経路の解析の基本的な特徴付けを行うと同時に、Rab10輸送経路により積極的に輸送される分子を同定するためのツールの作製およびRab10陽性輸送経路の実験系の構築を行うことを目標にしていた。輸送される分子を同定するためのツールである蛍光ラベルした受容体などの発現系の構築はおおむね順調に進んでおり、今後、各種受容体の挙動について解析を進めていく。一方、Rab10陽性新規輸送経路の解析の基本的な特徴付けに関しては、新たな知見としてPI(3,4,5)P3が経路決定の鍵分子であることを見出しているが、PI(3,4,5,)P3がどのように関わっているのかについて下流の分子機構が不明なままである。この点の解明はRab10陽性輸送経路の実験系の構築に大きく関わる点であり、さらに本研究課題で明らかにしたい最大の課題である。今後PI(3,4,5)P3の新規輸送経路の関与について解析を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
Rab10陽性新規輸送経路におけるPI(3,4,5)P3の関与について解析を進めていく。現時点では、PI(3,4,5)P3がRab10陽性新規輸送経路を抑制的に制御していると考えられる。よって、PI(3,4,5)P3がRab10の活性化や集積を抑制的に制御しているかどうかを検討する。具体的には、Rab10の局在化機構を明らかにしつつ、そこにPI(3,4,5)P3がどのように関与するのかをPI(3,4,5)P3の産生を実験的に制御することで検討する。とくにPI(3,4,5)P3の産生を顕微鏡下で時空間的に調節するオプトジェネティクスツールであるPA-PI3Kを利用する。PA-PI3Kの実験系は、我々の研究室ですでに使用しており、本研究課題においてもこれを利用する。また、Rab10陽性新規輸送経路により積極的に輸送される分子を同定においては、構築した蛍光ラベルした受容体発現系を用い解析を進めていく。Rab10陽性新規輸送経路の誘導は、PA-Rac1誘導性のものとPI3K阻害剤存在下におけるPMA刺激の2つを用いる。それぞれの実験系で各種受容体がどの程度Rab10陽性新規輸送経路によって運ばれるかを評価する。このことによりRab10陽性新規輸送経路の役割について新たな知見が得られることを期待する。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度において購入済みの消耗品などを使用したため、当該年度に購入する物品が少し減った。また当該年度に行う実験が少し遅れたため、抗体あるいは合成遺伝子などの必要なツールの一部の購入を次年度に繰り越した。次年度では、確立した実験系での膜成分の挙動を検出するため、様々な受容体の抗体、あるいはFM4-64などの膜成分の検出試薬および各種変異体を作製するための合成遺伝子の購入を予定している。また、当該年度の年度末に予定していた学会参加において旅費として計上していたものが、新型コロナウイルス感染症の影響により学会が誌上発表となったために旅費の使用がなくなった。
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