研究課題/領域番号 |
19K07250
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
大保 和之 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70250751)
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研究分担者 |
富澤 信一 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00704628)
尾野 道男 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50264601)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生殖細胞 / 幹細胞 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
私どもは、精子幹細胞の維持、分化機構の解明のために、未分化精原細胞に特異的な分子の発現や、ゲノム修飾状態を丹念に調べてきた。生殖細胞は、分裂後も、細胞間橋によって繋がったまま細胞が分裂していく。それゆえに、最初の一個目の細胞、”As精原細胞”のみが、幹細胞であると長らく信じられてきた。私どもばかりでなく、他の研究者からも、様々な未分化精原細胞特異的な分子の発見が行われた。その結果、新たに分かってきたことは、As精原細胞群が、不均一な細胞集団である可能性が高いことであった。一方、精原細胞が、膜型チロシンキナーゼc-Kit分子を発現するようになると、幹細胞活性が喪失する(前駆細胞となる)ことが移植実験により明らかにされている。これらのことから、As精原細胞から、c-Kit陽性精原細胞に至るまでの細胞のなかで、幹細胞は、その一部なのか全部なのか、探求、検討する必要性が生まれている。 そこで、本研究は、As精原細胞から、c-Kit陽性精原細胞に至るまでの細胞を、精原細胞がGFPでラベルされる遺伝子改変マウスを使用し、FACSにより純化、シングルセル解析を行い、幹細胞と考えられる細胞集団を同定する目的で行なった。その際に、遺伝子発現、DNAメチル化、クロマチンアクセッシビリティーの3つを同時にアッセイする、最新のマルチオミクス・シングルセル解析手法を取り入れることにより、より特徴のある細胞を正確に同定することを試みた。特に、蛋白に翻訳されているか、いないかの検討ができない遺伝子発現の解析ばかりでなく、DNAのメチル化や、ヒストン修飾などの変化の結果を反映するヌクレオソームの間隔などの違いが、細胞分化度、細胞種などの違いに現れることは良く知られているので、本研究で行なった遺伝子発現に加え、エピジェネティックスの指標を加えたシングルセル解析は、細胞の分化度の評価に最適と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで比較的厚みのあるデータが得られているRNA発現に加え、海外の共同研究者の支援のもと、DNAメチル化とクロマチンアクセッシビリティー解析の研究を、令和3年度は進めることができ、現在、さらなるデータ解析が進行している。本研究では、精原細胞において、最も未分化と考えられる細胞集団を同定する目的で、最新のシングルセル解析に挑戦した。その手法は、通常行われているシングルセルを用いたRNA発現による解析に加え、エピジェネティックな視点で、DNAメチル化とクロマチンアクセッシビリティーの解析を加えた合計3つの解析を、同一細胞で行うものである。その結果、解析細胞数は少ないが、多数の報告があり、確立されている、基準となる未分化、分化状態を反映する分子についての解析結果が、これまでの知見と矛盾しないものとして得られていることから、本手法の樹立は順調に進んでいると判断している。一個の細胞から、3つの異なるアッセイを行うというハードルの高さと、そのデータ解析手法の特殊性により様々な困難があったが、細胞採取から、次世代シークエンシング、結果のデータ解析といった一連のプロセスを、問題なく実行可能な実験技術と解析環境のプラットフォームが、ほぼできたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
シングルセル解析は、短期間のうちに、その有用性が証明され、大きな広がりを見せている。しかし、現在のシングルセル解析は、遺伝子(mRNA)の発現を指標とするタイプのシングルセル解析がほとんどである。遺伝子は蛋白になって初めて機能を発揮するが、遺伝子が転写されても蛋白に翻訳されないケースは稀ではない。従って、遺伝子発現だけに頼った細胞分化度の解析は、時に誤った結果をもたらす。一方、エピジェネティクス機構は、遺伝子発現をより高次に制御するシステムであるので、DNAのメチル化や、ヒストン修飾などの変化の結果を反映するヌクレオソームの間隔などの違いが、細胞分化度、細胞種などの違いに現れることは良く知られている。即ち、本研究で行なった遺伝子発現に加え、エピジェネティックスの指標を加えたシングルセル解析は、細胞の分化度の評価に最適と考えている。一方、少数の新規の細胞集団の発見には、よりサンプル数を増加させる必要性があることも、同時に分かった。将来、十分な検査細胞数のシングルセル解析へと繋げることができれば、最も未分化な細胞集団の正確な同定から、これまで見落とされていた新規の生物学的特性を持つ細胞集団、予想されていなかった機能を持つ可能性がある細胞集団、さらには、詳細な経時的な精原細胞分化過程の解析を施行することができる。これらを達成するには、新たな研究課題として申請する必要があるが、実行できれば、これまでにない最新で高度なシングルセルの手法で解析するメリットを十分に活かすことができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のために、動物、消耗品の入手が困難になり、実験に遅延が生じた影響による。全額を、シングルセル解析に関連する消耗品に使用する。
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