研究課題/領域番号 |
19K07251
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中島 裕司 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80207795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心臓形態形成 / 冠状動脈発生 / パターン形成 |
研究実績の概要 |
【背景と目的】冠状血管は心臓を栄養する血管でありステレオタイプなパターンで心臓に分布している。すなわち冠状動脈は肺動脈に面している大動脈冠状動脈洞から2本の冠状動脈が起始し同じパターンで心臓に分布する。正常発生では冠状動脈が肺動脈から起始することはない。本研究では冠状動脈が大動脈から起始する(肺動脈から起始しない)分子メカニズムについて明らかにすることを目的とした。 【実験と結果】はじめに胚仔期の心臓を用いて発生中の冠状動脈形成過程を模倣する器官培養系を確立した。胚心臓円錐動脈幹領域を摘出し3次元コラーゲンゲル内で培養した。完成した冠状動脈内皮細胞索を内皮細胞特異的抗体QH1を用いて可視化した。このモデルでは冠状動脈内皮細胞索が選択的に大動脈に繋がることが確認できたため冠状動脈発生メカニズムを研究するための有用な器官培養モデルになることを確認した。次に、冠状動脈が形成される大動脈領域と形成されない肺動脈領域を胚心臓から摘出し、発現している全遺伝子のmRNAを抽出しRNAシーケンスによって遺伝子発現量を比較した。その結果、○○遺伝子が大動脈領域に強く発現していた。この○○遺伝子に注目し確立した器官培養を用いて機能喪失実験を行った。その結果、冠状動脈内皮細胞は肺動脈にも繋がったことから○○遺伝子が冠状動脈の選択的大動脈起始に関与していることが示唆された。またインサイチュハイブリダイゼーションで○○遺伝子が特異的に大動脈に発現していることも確認した。 【今後の実験計画】培養系を用いて○○遺伝子の機能獲得実験を実施する(現在進行中)。さらに○○遺伝子が大動脈に選択的に発現誘導されるメカニズムについて検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
冠状動脈形成過程を模倣する器官培養系を確立することができ、RNAシーケンス法で冠状動脈が大動脈に侵入する過程を制御する有力な候補遺伝子を明らかにすることができた。また機能喪失実験、機能獲得実験によって当該遺伝子の機能についてほぼ裏付けをとることができた。以上の結果については途中経過を学術集会で発表し追加実験を行いながら論文作成の段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
不足している実験データを追加しながら論文発表の準備を行う。令和元年度の日本解剖学会は新型コロナのため誌上開催になったためこれから開催される国内外の学術集会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度末に新型コロナウィルスが流行し、解剖学会全国学術集会が誌上開催となった。そのため申請者、研究協力者等の学術集会参加が見合わされ、予定していた旅費を使用しなかったため次年度使用額が生じました。次年度の消耗品、旅費等に使用する予定です。
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