研究課題
本研究では、歯の上皮間葉相互作用における細胞動態や歯上皮幹細胞維持・分化の制御機構の解明を目的とする。2019年度はSIXファミリー転写因子に焦点を当て、遺伝子欠損マウスと野生型マウスとの表現型の比較により、1) 切歯形成を司るSIX1下流因子の同定、2) SIXファミリー転写因子による機能重複の検証、を目標にした。1) RNAseq解析のために、切歯プラコードの陥入が起こる前の胎齢11.5日胚の下顎原基を取り出し、切歯形成領域を切り取り、RNAを抽出した。2) 上顎切歯形成におけるSix2によるSix1/Six4の機能重複の可能性を検証するために、Crispr/Cas9によるF0解析を試みた。まず、Six1変異マウスの交配で得られた受精卵にSix2ゲノム編集を行い、胎齢12.5日で固定した。既存のSIX1抗体と、新たに作製したSIX2特異的抗体を用いて抗体染色と遺伝子変異解析を行った。免疫染色ではSIX1/SIX2ともにタンパク質が検出されない個体が存在したが、Six2のゲノム編集の結果と必ずしも一致していなかった(徳島大学先端酵素学研究所共同利用支援による研究)。したがって、今後SIX1/Six4の交配による受精卵を用いてSix2のゲノム編集を行いF0で解析しても、解析が困難になると判断した。そこで、新たに、Six2変異マウスをCrispr/Cas9ゲノム編集により作製した(徳島大との共同研究)。得られた3系統のうち、デザイン通りにexon1が欠損した系統とSix1/Six4変異マウスとを交配し、Six1/Six4/Six23重ヘテロマウスを作製した。このマウスは、生後も正常に成長しており、交配により、Six1/Six4/Six2 3重ホモ欠損胚が得られると考えられる。今年度は、Six1変異体およびSix1/Six4二重変異体における下顎切歯の形成異常の詳細な組織学的解析の結果をまとめ、学術論文として発表した(Takahashi et al., Dev. Dyn. 2020)。
2: おおむね順調に進展している
RNAseq解析の準備およびSix1/4/2多重変異体作製の準備が整った。今後速やかに、解析を進める予定である。
今後は、Six1変異体と野生型の下顎切歯形成領域から抽出したRNAを用いて、RNAseq解析を行い、Six1に制御を受ける遺伝子を明らかにする。また、Six1/Six4/Six2 三重変異ヘテロマウスと、Six1/Six4 二重変異ヘテロマウスまたはSix1/Six4/Six2三重変異ヘテロマウスを交配し、Six1-/-Six4-/-Six2+/-およびSix1-/-Six4-/-Six2-/-胚の上顎切歯を中心とした表現型解析を進める予定である。
RNAseqの受託解析の予定が遅れており、残額が生じた。RNAseqの解析費用に使用する計画である。
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Dev.Dyn.
巻: 249 ページ: 1098-1116
10.1002/dvdy.174