研究課題/領域番号 |
19K07257
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中倉 敬 帝京大学, 医学部, 講師 (60568658)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有窓型毛細血管 / 窓 / 基底膜 / 下垂体 / フィブロネクチン / インテグリン |
研究実績の概要 |
有窓型毛細血管の壁には「窓」と呼ばれる直径約70 nm程度のトンネル構造が多数存在し、物質の移動路として機能している。有窓型は主に内分泌器官や小腸などの物質交換が盛んな器官に分布しており、ホルモンや栄養素といった大型分子は窓を通過して血液-組織間を行きする。このように、窓は物質交換における必須構造であるにも関わらず、その形成機序の全貌はいまだ不明である。 申請者は今年度、ラット下垂体前葉から磁気ビーズ標識CD31抗体を用いて回収した有窓型内皮細胞の新規培養法の確立を目指し、同細胞を様々な細胞外マトリックス(フィブロネクチン、コラーゲンIV、ラミニン411および511)でコートしたシャーレ上で培養し、有窓性を長期的に維持できる培養条件の検討を進めた。その結果、①有窓型内皮細胞の形態学的特徴を維持して培養するためにはフィブロネクチンによるコートが最も適していること(Nakakura et al. Cell Tissue Res. 383: 823-833. 2021)、さらには②フィブロネクチンが下垂体有窓型内皮細胞膜に局在するインテグリンα5β1を介して微小管を制御し、窓を覆う隔膜の構成タンパク質PLVAPの細胞内輸送を調節していることを明らかにすることができた(Nakakura et al. Cell Tissue Res. in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、in vitro解析を行う上で必要不可欠である下垂体有窓型内皮細胞の新規培養系の確立に成功したことに加え、基底膜を構成する細胞外マトリックスの一つであるフィブロネクチンの有窓型内皮細胞における役割を明らかにできたことから、研究全般としてはおおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は有窓型内皮細胞培養系を実験モデルの中心に据え、有窓型毛細血管に特徴的に高発現する細胞外マトリックス因子の機能解析を行う。流れとしては、購入もしくは自身で準備した候補因子をシャーレにコートし、その上でラット下垂体単離内皮細胞を数日間培養する。そして、①窓マーカーPLVAPのmRNA発現変動をqPCRで解析するとともに、②PLVAPの細胞内局在を蛍光免疫染色で可視化し、その動態変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察することで、その機能を調べる。また、③走査型電子顕微鏡で細胞膜構造を観察し、窓の有無や大きさ、数量を測定するとともに、④下垂体内皮細胞を対象に候補因子のsiRNAによるノックダウン処理を実施し、候補因子の発現低下と有窓状態の相関を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
進歩状況に記載のように実験計画はおおむね順調であったが、新型コロナウイルスの影響が長引いているため、研究計画を適時変更して対応している。このため、今年度も若干の繰越金が生じているが、細胞培養用試薬(培地、培養シャーレなど)やPCR酵素類といった消耗品の購入に再配分して使用する。
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