研究課題/領域番号 |
19K07258
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
岡部 正隆 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10300716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マウス / ゼブラフィッシュ / Gcm2 / HEK293 |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュ・マウスともに、GCM2-APEX融合タンパク質を有する遺伝子組換え動物の作成を試みたが、遺伝子組換え体を得るには至らなかった。 ゼブラフィッシュとマウスのGCM2タンパク質の下流標的遺伝子の差異を検討するにあたり、2種間でのGCMタンパク質の機能を比較する実験を行った。GCM2結合配列を持つレポーターベクターを作製し、それぞれゼブラフィッシュ・マウスGCM2の発現ベクターと共にHEK293細胞へ導入し、同細胞内における転写活性化能の差を調べた。その結果、マウスGCM2はレポーター遺伝子を活性化できるものの、ゼブラフィッシュGCM2はレポーター遺伝子をほとんど転写することができなかった。そこで、二種のキメラGCM2を作製し、転写活性化能の違いを詳細に解析した結果、HEK293細胞内でGCM2タンパク質のDNA結合能には二種間で違いはないが、レポーターの転写活性化にはマウスGCM2のC末部に存在するTAD(transactivation domain)が必要十分であることが明らかとなった(第126回日本解剖学会にて発表)。この実験結果は、当初予想していた、GCM2と協調して機能するコファクターの違いが、GCM2タンパクの構造の違いに基づいており、進化の過程で種間で異なる下流標的遺伝を生み出した可能性を示唆した。さらに今回作成したGCM2結合配列を持つレポーターベクターをゼブラフィッシュ胚に導入したところレポーター遺伝子の活性化は認められなかった。このことは、ゼブラフィッシュGCM2による転写活性化にはGCM2結合配列と協調して働く他の因子の結合配列が近傍に必要な可能性が示唆された。これらの研究結果は、既存のGCM2結合配列以外の塩基配列の変化もGCM2の下流標的遺伝子の変化に寄与することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大、緊急事態宣言等の影響で、遺伝子組換え動物の作成など、工程の長い動物実験の実施が困難な1年間であった。そのため、当初の予定であったCRISPR-Cas9を用いたGCM2-APEX動物の作成が完了できなかった。これらノックイン動物の作製の遅延のため、培養細胞を用いた方法を検証し、その実験結果から今後のゲノム解析を進める上で有意義な結論を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度であるが、当初の研究計画を遂行するため、研究期間を延長し、遺伝子組換え動物の作成を続ける予定である。また本研究の目的を達成させる以下の手法も同時に検討を進める。第一に、マウス・ゼブラフィッシュGCM-APEX融合タンパクを、近年報告された副甲状腺の初代培養法を用いて副甲状腺細胞や、HEK293細胞、魚類由来の培養細胞に発現させ、GCM2コファクターの同定を試みる。第二に、HEK293細胞下でコファクターのGcm2レポーター遺伝子の転写に関連した解析を行い、二種間のGcm2とコファクターの関係の差異、転写活性化能の差異を明らかにする。さらに、APEXではなく、作成したGCM2-FLAGゼブラフィッシュを用いてGCM2コファクターの質量分析が可能かどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により当初の研究計画を進めることができなかった。計画していた遺伝子組換え動物の作成が完了した後、当初の研究計画の通りゲノム解析を行うことを計画しており、次年度使用額の大半はこれに充てる予定である。
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