研究実績の概要 |
本年度の研究では、成体ラット下垂体前葉内分泌細胞における一次線毛の形態学的解析を行った。 ①蛍光免疫組織化学染色による下垂体前葉内分泌細胞の一次線毛の観察:下体前葉内分泌細胞において、各抗ホルモン(GH,PRL,LH,TSH,ACTH)抗体と線毛のマーカー(抗アセチル化チューブリン抗体など)で蛍光免疫組織化学染色した切片をレーザー共焦点顕微鏡で観察し、一次線毛がユビキタスな構造体であることを示した。 ②走査電子顕微鏡(SEM)による下垂体前葉内分泌細胞一次線毛の 3D 解析:下垂体前葉は細胞塊が集合した組織であるため、SEM による個々の細胞表面観察が困難である。そこで、結合組織消化法を応用し、細胞表面を露出させることで、一次線毛の 3D 微細構造解析を行った。下垂体前葉ホルモン産生細胞一次線毛の3D微細形態が明らかになった。 ③連続切片SEM・3D再構築法による一次線毛の大局的構築の比較観察:連続切片SEM・3D再構築法は、樹脂包埋した組織ブロックから連続切片を切削後、ガラスなどの基板に載せ、それらをSEMで観察し、目的の構造を3D再構築するモダンなイメージング技法である。この先端的イメージング技術を用い、下垂体前葉各内分泌細胞の一次線毛の大局的構造を比較観察し、形態的共通性と多様性について詳細に解析した。さらに、免疫組織化学手技を加味した連続切片 SEM 法の開発にも成功し、各ホルモン産生細胞を正確に同定した上で、一次線毛の大局的構築を解析することができるようになった(論文投稿予定)。 ④迅速オスミウム浸軟法の開発:オスミウム浸軟法は、細胞内の3D微細構造をダイレクトに解析することができる唯一の手法である。試料作製に時間がかかり、不安定なこの試料作製法を根本的に見直し、迅速且つ確実な試料作製手順を開発した(Koga et al., in press)。
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