現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生期において、糖転移酵素Dpy19L1は海馬原基を含む大脳皮質に強く発現する(Watanabe et al., Development, 2011)。一方で、Dpy19L1 KOマウスは、大脳皮質から離れた後方中隔核の構築異常を示した。これまで両者の因果関係は全くわからなかった。今年度、Dpy19L1 KOマウスが示す恐怖行動の減弱と後方中隔核形成異常が、中枢神経系のDpy19L1によるものであることを明らかにした。さらに、後方中隔核の移動・形成には、海馬から伸びる神経束(脳弓)が必要であることを報告した (Watanabe et al., Sci. Rep., 2018, 2020)。また、中枢神経系特異的Dpy19L1 KOマウスにおいて、顕著な脳弓形成異常が観察できた。私達は以前Dpy19L1が大脳皮質神経細胞の軸索伸展を制御することを明らかにしている (Watanabe et al., Plos one, 2016)。これらの結果から、発生期大脳皮質に発現するDpy19L1は脳弓線維の形成を制御することで、間接的に後方中隔核の移動・形成に関わっていることを強く示唆することができた。
|