研究課題/領域番号 |
19K07267
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 圭祐 神戸大学, 医学研究科, 助教 (10575468)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シュワン前駆細胞 / 自律神経系 / Phox2b / Notch / 交感神経系 / Phox2b 3'UTR / bipotential progenitor |
研究実績の概要 |
申請者は、Phox2b-LacZレポーターマウスを様々な変異マウス系統と掛け合わせ、肢芽内に存在するPhox2b-LacZ陽性細胞が増減する変異マウスの同定を試みた。その結果Phox2b-LacZ陽性細胞が増加する変異マウスを発見した。この変異マウスのバックグラウンドでPhox2b-Cre; Rosa-lox-stop-lox-tdTomato (Ai9)を解析し、交感神経節細胞由来のシュワン前駆細胞を調べたところ、変異マウスと野生型マウスのバックグラウンドで、肢芽内に存在するtdTomato陽性細胞の数に変化はなかった。この事から、Phox2b発現履歴を持った、交感神経節を経由するシュワン前駆細胞は、野生型マウスは肢芽内で大部分がシュワン細胞となるのに対し、変異マウスではシュワン細胞への分化が起きず、逆にPhox2B発現ニューロンへと変化することが分かり、シュワン細胞は。発生後期のステージおよび新生児マウスでこの変異マウスの腕を解析したところ、交感神経細胞のマーカーであるTyrosin Hydroxylase抗体に陽性であることが分かり、他の細胞系譜のマーカー(平滑筋・グリア・感覚神経節細胞・血管内皮細胞など)を発現しないことも明らかになった。またこの変異マウスを腫瘍病理モデルマウスと掛け合わせた結果、肢芽内のPhox2b-LacZ陽性細胞の数がさらに増加することも発見した。この事から、この細胞が腫瘍発症に何らかの役割を持つことが示唆された。今後この変異マウスに、交感神経節の発生が異常になるような変異マウスを掛け合わせ、Phox2B陽性細胞に対する影響を解析する他、変異マウスからPhox2B陽性細胞を単離し、RNA-seqを行ってどのような遺伝子に発現変動があるかを解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は肢芽内のPhox2B陽性細胞の数を大幅に増加させる遺伝子変異の同定に成功し、生後においても実際に肢芽内のニューロンが増加することを確認した。一方でRNA-seqについては実験準備段階であり、マウスが予定通り採取できないなどの諸問題により、現在もなお結果を同定するに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今回Phox2b陽性細胞の数に影響を与える変異マウスを発見することができた。そこで野生型マウスと変異マウスとで肢芽内Phox2B陽性細胞を単離し、RNA-seqを行う。Phox2b-Cre; Ai9またはPlp-CreERT;Ai9で交感神経節由来シュワン細胞を遺伝学的にラベルし、どのような遺伝子の増減が原因で肢芽内Phox2B陽性細胞の数が変化するのかを解析する。また変異マウスをコンディショナルにノックアウトした時に、同様の増加が認められるのか調べるため、コンディショナルノックアウトの系統をゲノム編集により作成する。また変異マウスで交感神経節の発生を攪乱させた時にどのような表現型になるのかも解析する。
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