研究課題
有尾両生類に属するイモリは、現在までに知られている脊椎動物の中で最も強い再生能力を有し、様々な器官や体の部位を再生することができる。この様なイモリは、分化した精巣組織を完全に除去されても再生することが可能である。イモリ精巣の再生は、Terminal Crestと呼ばれる精巣に隣接する結合組織に存在する幹細胞から、生殖細胞を含む精巣組織が再形成される点が特徴であるが、 これまでに広く用いられてきたイモリの種を用いた研究では、実験上の制約から進展がほとんど見られなかった。そこで本研究では、自ら確立した新規モデル動物であるイベリアトゲイモリを材料として、その長所を活用することにより、1)再生を開始させるシグナルの解明、2)精巣再生に寄与する幹細胞の同定、そして3)再生過程を制御する遺伝子ネットワークを示すことでイモリ精巣再生の機構を明らかにすることを目指した。3年間の研究活動により、イモリ精巣発達や雄性生殖細胞の発生過程に関する基本情報と、日長条件が精巣分化に与える影響をまとめた論文を発表した。さらに、イモリの精巣がTerminal Crestから再生される直接的な証拠を示す結果を移植実験から得ることができた。また、イモリの精巣再生は既存の精巣組織から分泌される雄性ホルモンのテストステロンによって抑制的に制御されていることを示す結果を得た。加えて、イモリの始原生殖細胞が形成される過程において、dazl遺伝子が機能する2つのタイミングを示した。これらの結果については、現在、国際科学雑誌に論文を投稿する準備を進めている。この他に、心臓再生、イモリの遺伝子カタログ作製に関する研究等を国際科学誌に発表した。
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Development, Growth & Differentiation
巻: 63 ページ: 277~284
10.1111/dgd.12738