研究課題
本年度は作出済みの小脳神経系特異的GPHR欠損マウス(GPHR F/F;GluD2)の解析を重点的に遂行した。GPHR F/F;GluD2は生後60日から小脳性運動失調の表現型を示し、加齢と共に重症化した。また、形態学的解析から、加齢に伴う小脳全体の萎縮やプルキンエ細胞の脱落が確認された。プルキンエ細胞の経時的な解析では、脱落前のゴルジ体の形態は層板構造の崩壊および断片化などの異常を示していた。また、プルキンエ細胞軸索の肥大化や深部小脳核へのシナプスの変性が確認された。さらにはプルキンエ細胞の電気生理的解析から、バスケット細胞からの入力が有為に抑制されていた。この現象はバスケット細胞軸索がプルキンエ細胞の軸索起始部を取り囲み形成するパンソー構造が消失していた形態学的解析結果と相関していた。これらの結果はゴルジ体の酸性環境不全に起因した形態異常が神経細胞死を引き起こすることを示しており、神経細胞におけるゴルジ体内腔酸性環境の重要性を明らかにした。加えて、ゴルジ体の形態異常に起因する細胞内変動を明らかにするために、GPHR欠損神経細胞のマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。その結果、GPHRを欠損した細胞および組織では転写因子SREBP2の転写調節を受けるコレステロール生合成関連遺伝子群の発現が低下していた。この結果はゴルジ体の形態異常を示す神経細胞死はコレステロール濃度低下に起因している可能性を示唆している。
2: おおむね順調に進展している
小脳神経系特異的GPHR欠損マウスの表現型解析を行い、その研究成果を原著論文として報告した。また、SREBP2を発現させる数種類のウィルスベクターを完成させ、GPHR欠損に起因したゴルジ体形態不全の神経細胞および組織にコレステロール生合成関連遺伝群を発現させる方法を確立した。
ゴルジ体形態異常に起因するコレステロール生合成関連遺伝子群の減少について、分子メカニズムの解明を目指す。
発注した抗体の国内在庫がなくなり、海外より取り寄せになってしまったため。入手した抗体は新年度の予算に計上することで、前年度の補助金分を消費する。
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eNEURO
巻: 6 ページ: 0427-18
10.1523/ENEURO.0427-18.2019.
Life Sci Alliance.
巻: 3 ページ: -
10.26508/lsa.201900513.