研究課題
スルファチドは、神経系、腎臓、気管、消化管、脾臓、膵臓、精巣などに多く存在するスフィンゴ糖脂質で、特に神経系の髄鞘に多く存在する。スルファチドは、親水性のガラクトース部位に硫酸基が付加しているのが特徴で、その分子種は、糖鎖の長さ、脂肪酸の炭素数、飽和度、水酸基の付加などバリエーションに富んでいる。スルファチドは、免疫応答、細胞生存、ミエリン組織、血小板凝集、宿主-病原体相互作用など、様々な細胞プロセスに関連する多くの分子と相互作用することが示されている。末梢神経系の有髄および無髄シュワン細胞でもスルファチドが合成されていることが報告されているが、その分子種、発現時期、機能などは明らかではない。そこで、後根神経節(DRG)の分子種の解析、その欠損による表現型の解析、発現時期の特定を行った。シュワン細胞の成熟が胚初期から観察されるニワトリ胚の質量分析イメージング解析により、ニワトリ胚の5日目にDRGで4種のスルファチドが発現し、その発現量は発生とともに増加することがわかった。また、免疫染色解析により、シュワン前駆細胞がスルファチド分子種を産生することが明らかになった。さらに、マウス胚DRGでは、発現時期はかなり遅いものの、E14日目に7種類のスルファチド種の産生が始まり、成体マウスDRGでは13種類のスルファチド種が産生されていることが明らかになった。これらのスルファチド種の欠損は、有髄シュワン細胞ではパラノードの異常、無髄シュワン細胞では直径の大きな軸索を取り囲むなどの形態異常を示した。これらの結果から、スルファチド分子種の発現は生涯にわたって維持され、シュワン細胞前駆体、ミエリン鞘特異的な役割を持ち、さらに成熟過程では分子種特異的な相互分子が存在する可能性が考えられた。
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Journal of Lipid Research
巻: 63 ページ: 100210~100210
10.1016/j.jlr.2022.100210