研究課題/領域番号 |
19K07280
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
浦崎 明宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40550083)
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研究分担者 |
中川 修 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40283593)
渡邉 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (20562333)
劉 孟佳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (50826922)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管 / 発生 / ゼブラフィッシュ / 遺伝性出血性末梢血管拡張症 |
研究実績の概要 |
動脈・静脈・リンパ管は解剖学的に独自のネットワークを別々に形成する。異なる脈管同士が接触して接続(吻合)・並走することが、脊椎動物の発生にどのような重要性を持っているのかについては明らかになっていない。本研究では、動脈・静脈・リンパ管ネットワーク形成における異なる脈管と脈管の相互作用の果たす役割およびその分子機構を明らかにすることを目的としている。 既存系統では初期の消化管-肝臓-門脈系の血管を可視化することは困難であったが、独自の系統を用いることによりこれら血管系を可視化することに成功した。本年度は、CRISPR/Cas9システムによりacvrl1変異体を作製し、その表現型の解析を行った。acvrl1変異体と内皮細胞および血球の可視化系統を交配し、内皮細胞と血球を同時に可視化できる系統を作製した。acvrl1変異体において、脳において動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接繋がる血管異常である動静脈奇形が、消化管-肝臓-門脈系においても血管形成異常を生じることを見出した。さらに、生体ライブイメージングを行い血管異常が生じる過程を解析した。 ACVRL1は、動静脈奇形・末梢血管拡張・出血を特徴とする遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の原因遺伝子として知られている。本研究により、脈管間相互作用の基本原理が細胞・分子レベルで解明され、脈管病の病態の理解に繋がれば、発生学・遺伝学への学術的な影響を与えるだけでなく、医学分野にも重要な波及効果が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脈管と血球の可視化系統の構築は順調に進んだ。脈管間相互作用関連因子の機能解析において、ALK1シグナルの構成因子であるacvrl1変異体における新たな血管形成異常を見出すことができ、ライブイメージングを用いた表現型解析も進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、形成過程があまりよく分かっていない消化管-肝臓-門脈系の血管形成およびその形成過程におけるALK1シグナルの役割を中心に研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで脈管と血球の可視化系統およびacvrl1変異体作製を中心に進め、発生学的な詳細な解析がまだ十分に行われていないために、次年度使用額が生じた。今後、より詳細な変異体を用いた表現型解析、細胞挙動解析、遺伝子発現解析を行い、脈管発生における脈管間相互作用の意義の検討を行う予定である。
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