研究課題/領域番号 |
19K07284
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
石橋 賢 浜松医科大学, 医学部, 助教 (90832189)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オレキシン / slow AHP / SKチャネル / 覚醒 / 非選択的陽イオンチャネル |
研究実績の概要 |
本研究は、オレキシンがセロトニン作動性ニューロンに引き起こす作用の一つであるオレキシン誘発性発火後過分極増強のうちアパミン非感受性成分(ai-oeAHP)の発現機序ならびにセロトニン作動性ニューロンの発火特性に及ぼす影響の解明を目的としている。 平成31年度は、電気生理学的手法を用いた薬理学実験により以下の進展がみられた。Na+/K+-ATPaseの阻害薬であるOuabainや、Na+/K+交換体の阻害薬であるKB-R7943ではオレキシンに有意な阻害作用がなかったのに対して、細胞外ナトリウムの除去、または非選択的陽イオンチャネルの阻害剤であるFlufenamic acid (FFA)によってオレキシンの作用が抑制された。これらの実験結果から、オレキシンの作用発現には非選択的陽イオンチャネルの関与が考えられる。これら非選択的陽イオンチャネルのうちTRPC、とりわけTRPC6が関与していると考えられることから、選択的TRPC6欠損動物を用い検討したところ、オレキシンの作用に対してTRPC6の関与を示す結果は得られなかった。一方でai-oeAHP中の膜抵抗を計測したところ膜抵抗が一過性に増加していることを示す結果が得られた。また、カリウムチャネル阻害作用を持つセシウムによる細胞内灌流条件下では、オレキシンの作用にわずかな減弱がみらたがai-oeAHPは阻害されなかった。このことからオレキシン誘発性後過分極増強は、過分極作用を引き起こすイオンチャネルの開口によるものではなく、興奮性イオンチャネルの閉口による過分極であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた電気生理学的手法を用いた薬理学実験により、当初予想されていた分子機序とは異なるもののオレキシンがセロトニン作動性ニューロンに引き起こす作用に、これまでに報告されたことがない全く新しい機序が関与していることが明らかになりつつある。さらに、次年度以降に計画していたTRPCサブタイプ選択的欠損動物による実験も開始できたことから、全体としておおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、引き続きオレキシンの作用について分子機序のさらなる解析、ならびにオレキシンがセロトニン作動性ニューロンに対して引き起こす作用が複数あるため、それぞれの要因がセロトニン作動性ニューロンのシナプス入力に対する感受性、ひいては発火特性に及ぼす影響について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、ダイナミッククランプを用いた実験を共同研究先のNew York medical Collegeにて行いダイナミッククランプシステムの購入を延期したため。
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