研究課題/領域番号 |
19K07288
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
田丸 輝也 東邦大学, 医学部, 講師 (80291706)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | circadian rhythm / synchronization / transcription factor / biological clock / bioluminescence / nuclear translocation / phosphorylation / stress response |
研究実績の概要 |
環境によるストレス(環境ストレス)は様々な健康問題・疾患(生活習慣病・癌等)を引き起こし、時計蛋白質BMAL1等による細胞時計を介するストレス適応能の低下はその一因だと考えられている。研究代表者はその根拠として、様々な環境ストレス(熱、活性酸素、UV)に対し、複数の適応防護システムと連携した細胞時計の同期応答が適応反応を駆動し、その同期障害はストレス適応能を低下させることを示している。 本研究は、環境ストレス適応の基盤となる細胞時計の同期を統御する蛋白質コード(修飾、相互作用、細胞内局在等)を解明することを目的とする。研究代表者はその鍵として細胞時計同期の初期過程で不可欠な役割を担うBMAL1のS領域とBMAL1核細胞質内局在パターンの同期性転移(ISR)を発見し、同期に関与しうるBMAL1蛋白質制御も解明している。 本年度は、末梢時計モデルとして、繊維芽細胞の単一細胞レベルで、多様な環境・ストレスによる細胞時計同期において、Bmal1プロモータ制御下mVenus-BMAL1時計タンパク質発現蛍光レポータを指標に、BMAL1の免疫染色と同様に、時計同期の初期の ISR現象を確認した。中枢時計における解析として、SCN特異的特異的BMAL1KOマウスを交配により作製し、行動、スライスにおける発光レポータリズムの破壊を確認し、AAVベクターにおけるBMAL1野生型・変異型レスキュー系を構築し、改良中である。本研究で示される新たな時計同期機序の知見を礎にストレス適応能の向上を図る医療への展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
単一細胞レベルでの細胞時計同期の際のBMAL1の挙動を調べる為、発光・蛍光を利用した生細胞ライブイメージング測定系を樹立するした。蛍光がGFPより10倍ぐらい強いといわれるVenusをタグにしようと試み、先行論文で使われているVenus-BMAL1は、Venusがdimer形成する可能性があるので、モノマー型の変異mVenusを用いた。しかしながら、リンカーによって、大きく影響が異なり、mVenus- BMAL1によってBMAL1KO細胞の時計レスキューができて、かつ、免疫染色による挙動に近いLinkerを見つけた。mVenus- BMAL1によるライブイメージングにより、核・細胞質への分布動態を調べることにより、時計同期の初期の ISR現象を確認できた。当初、計画していたテーマのうち、中枢時計すなわち、脳、視床下部の中枢時計SCNにおける上記の解析は、SCN特異的SCN特異的あるいはSCNの全体に発現するGABAニューロン特異的なBMAL1ノックアウトマウスの交配が、コロナ渦で遅れていたが、SCN特異的BMAL1ノックアウトマウスの作製が完成し、マウスの行動、SCNスライスでのリズム解析によって体内時計が壊れることを確認した。AAVベクターでBMAL1を発現し、時計機能をレスキューする系が中枢時計では、まだ、うまく実施できていないので、発現方法を改良中で、本計画を1年延長した。また、BMAL1-Sに結合する蛋白質のMS解析は、培養細胞の内在性レベルの発現量では、十分な収量を得られていないため、他の実験を優先した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、1)SCN特異的あるいはGABAニューロン得意的なBMAL1ノックアウトマウスの交配による作製とBMAL1発現によるレスキューする系を改良し、中枢時計における細胞時計同期におけるBMAL1-S の役割の解明。 2)ISRを生細胞リアルタイムで測定するため、mVenus-BMAL1の発現によるBMAL1の挙動の生細胞リアルタイム蛍光コンフォーカル解析を進めていきたい。3)BMAL1-Sに結合する蛋白質のMS解析は、タグを改良して、精製純度を上げることを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
中枢時計すなわち、脳のSCNスライス培養とマウス個体行動の解析は、SCN特異的なBMAL1ノックアウトマウスの交配による作製が完成したが、体内時計変異株は繁殖効率が悪く、実験の遅れの一因になっている。また、AAVによるレスキュー系の確立も遅れている。その為、動物実験、スライス培養実験に関わる費用が抑えられ、次年度使用額が生じたので、計画を延長した。次年度は、繰越分とあわせて、主に、動物実験、スライス培養実験のための試薬、受託合成・解析費、また、論文投稿学会参加費などに使用する予定である。
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