研究課題
計画中の長期間にわたる月 (1/6-G) および火星 (3/8-G) の有人探査では、特に火星への飛行では(地球との距離が最も短い時期を選んでも)往復ともに6か月の無重力環境に暴露される。従って、月または火星における抗重力筋活動に加えて、飛行中の活動抑制を考慮すると、身体活動抑制や老化による活性酸素産生や宇宙放射線被曝による悪影響が、宇宙飛行士にとって大きな健康問題となると憂慮されている。そこで、SAMP1マウスおよびWistar Hannoverラットを使って老化、後肢懸垂による活動減少、それにX線照射による影響が、manganese superoxide dismutase (MnSOD) の腹腔内投与で抑制できるか追求した。コントロール群には、Phosphate-buffered saline (PBS) を投与した。その結果マウスを使った実験では、0.01 mg/日のMnSOD投与で、PBS投与群のヒラメ筋に見られた老化に伴う遺伝子発現の変化 (up-またはdown-regulation) が抑制された。MnSOD投与はガン患者における放射線治療による副作用抑制に利用されているが、X線照射による遺伝子発現変化に及ぼす影響はマイナーであった。X線の照射量や宇宙放射線を極力模擬する放射線の種類等を考慮した追加研究に着手している。MnSODを0.08 mg /kg 体重/日投与したラットを使った実験でも、PBS投与群において老化に伴い誘発された遅筋 (ヒラメ筋) および速筋 (足底筋) におけるタンパク質発現の変化 (up-またはdown-regulation) がMnSOD投与によって軽減されるという傾向が見られている。詳細な解析は現在進行中である。
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