研究課題/領域番号 |
19K07292
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
山肩 葉子 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 助教 (20210338)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 加齢 / 記憶 / キナーゼ / 蛋白質リン酸化 |
研究実績の概要 |
海馬依存性記憶が加齢と共に低下することはよく知られている。その原因として、加齢に伴う中枢神経系、特に海馬の萎縮・神経細胞数の減少が想定されていたが、最近ではシナプス機能の変化が注目を集めている。シナプス機能の中でも、学習や記憶の基本現象と考えられるシナプス可塑性に重要な働きをする分子として、Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(カルモジュリンキナーゼII、CaMKII)が知られている。4つの遺伝子にコードされたアイソフォームのうち、CaMKIIαがその中心的な役割を果たすと考えられ、実際、研究代表者らが作製した不活性型のCaMKIIαノックインマウス(CaMKIIα-KI)では、海馬依存性の記憶に著しい障害が観察されている。本研究においては、加齢に伴う海馬依存性の記憶の低下にカルモジュリンキナーゼIIの活性低下が関わっているという仮説を立て、その仮説の検証を目指している。 昨年度は、野生型マウスを用いて生後1年の高年群と生後3ヶ月の若年群とで海馬依存性記憶の比較を行ったが、本年度は、さらに高齢である生後1年半の老年群と若年群のマウスとを用いて、海馬依存性ならびに海馬非依存性の記憶の比較を行った。その結果、老年マウスでは、モリス水迷路における海馬非依存性の手がかり記憶については若年群と同等の記憶が獲得できたが、海馬依存性の空間認識記憶については、一定程度獲得ができるものの、若年群に比べると成績が劣ることが判明した。さらに、これらマウスの脳サンプルを用いたキナーゼ活性測定も進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、本年度はさらに高齢のマウス群と若年マウス群を用いて、モリス水迷路による行動学的解析を行い、加齢に伴う海馬依存性記憶と海馬非依存性記憶の変化を観察した。その結果、老年マウス群では、海馬依存性記憶が特異的に低下していることが確認できた。また、これらマウスの脳サンプルを用いて、キナーゼ活性測定を進めることができた。このように計画通り、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに行動学的解析とマウス脳サンプルを用いたキナーゼ活性測定を始めとする生化学的解析を進めることにより、加齢に伴う海馬依存性の記憶の低下にカルモジュリンキナーゼIIの活性低下が関わっているのか、またそのメカニズムについて、探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、予定していた学会出張・研究打ち合わせ出張がリモート開催となったため、また、既存の設備を最大限活用し、可能な実験を優先的かつ効率的に行ったため、次年度使用額が生じた。 これら次年度使用額については、新たな実験のための機器、試薬、実験動物の購入等、計画的に執行して行く予定である。
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