研究課題/領域番号 |
19K07293
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
鳴島 円 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 准教授 (30596177)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 上丘 / 恐怖反応 / 光刺激 / シナプス |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き視覚誘導性の恐怖反応に関わる上丘ニューロンを標識し、選択的に電気生理学的記録を行う手法を用いて、上丘ニューロンの発火特性およびシナプス入力の解析を行った。 (1)視覚誘導性の恐怖反応のうち、素早い逃避行動に関連する上丘ニューロンが投射するParabigeminal nucleus(PBGN)核に逆行性トレーサーを注入し、標識された細胞から電気生理学的記録を行い、電流注入による発火特性の解析を行った。また記録後に恐怖反応をトリガーすることが知られているパルブアルブミン(PV)陽性ニューロン群を識別するため、免疫染色を行い、PV陽性とPV陰性のPBGN投射細胞の膜特性および形態学的特徴の比較を行った。その結果、PBGN投射かつPV陽性の上丘ニューロンに発火特性において少なくとも高閾値-連続発火、低閾値-連続発火、一過性発火の3つのグループがあること、形態学的には表層方向に伸びるapical dendrite様の樹状突起を持つ細胞が多いことが明らかになった。 (2)網膜または大脳皮質一次視覚野にChannelrhodpsin 2(ChR2)を発現するアデノ随伴ウィルスを注入したマウスから上丘を含むスライスを作成し、網膜由来入力または大脳皮質由来入力を青色光により刺激して、PBGNに投射する上丘ニューロン群へのシナプス入力を解析した。その結果、ほぼすべてのPBGN投射ニューロンが網膜または大脳皮質からの単シナプス性の興奮性入力を受けることが明らかになった。網膜由来と大脳皮質由来入力の性質を比較するために薬理学的実験を行ったところ、特にノルアドレナリンに対する反応が網膜由来入力と大脳皮質由来入力で異なることを示唆するデータが得られており、現在解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
視覚誘導性の恐怖反応に関わる上丘ニューロンの電気生理学的・形態学的分類はほぼ終了した。現在はシナプス入力の解析、行動学的解析を行っている。またin vivoのイメージングおよび刺激の実験に関しては、手術方法の最適化、使用する光受容チャネル、Ca指示タンパクの発現レベルの調整が必要であり、現在のところin vivoの実験のデータ取得に至っていないため、進捗はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
上丘神経回路の経験依存的なシナプス可塑性の解析については、当初アデノ随伴ウィルスによりChR2を発現させた標本でminiature EPSCの解析を用いて行う予定であったが、発現レベルを一定にするため、Cre-loxPシステムを利用して網膜または大脳皮質にChR2を発現する遺伝子改変マウスを作成して使用する方針に変更した。in vivoのイメージング実験およびSLM顕微鏡による刺激実験に関しては、光刺激とイメージングを同時に行うため、光受容チャネルとCaイメージング用のGCamPの共発現のための条件検討およびウィルスの最適化を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画ではin vitroの電気生理学的実験と行動学的実験を年度内に終了し、in vivoのイメージングおよび刺激実験を行う予定であったが、in vivo実験は準備にとどまったため、予定していた光学部品等の購入費、動物の購入費やウィルスなどの購入・作成費用の一部がが次年度の支出となる。また、新型コロナウィルスの流行のため、国内・海外の学会がオンラインでの実施となったため、旅費が支出されなかった。
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