今回の結果により,「延髄縫線核を介した交感神経活動の促進」というオキシトシンの新たな作用とその神経伝達経路が明らかになった.特に,オキシトシンが他の脳領域からの熱産生シグナルを増強することは,情動表出に伴う自律神経反応(心拍数や体温の上昇など)の神経メカニズムの研究への展開が期待される.また,オキシトシンの継続的な熱産生増強作用は全身のエネルギー消費量を長期的に増加させることから,肥満の防止に役立っているものと考えられる.本研究で得られた知見がプラダー・ウィリー症候群の肥満発症機序の解明や,肥満ならびに関連疾患の新たな治療法の開発につながることが期待される.
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