研究課題
Cav1.2チャネルの活性とカルモジュリンの結合部位との機能的相関を明らかにすることを目的とする。カルモジュリンはCaチャネルの活性調節の主因子である。その結合部位はチャネルの細胞内領域に複数あるが、結合と機能の関係は明らかでない。Cav1.2チャネルの活性を電気生理学的手法の1つであるパッチクランプ法で観察すると、細胞内カルシウム濃度とカルモジュリン濃度への依存性が見られ、双方とも高濃度で作用させるとチャネルは不活性化する。カルシウム依存性の不活性化は以前から研究されているが、その作用機序は解明されていない。また、高濃度のカルモジュリンによる不活性化は、カルシウム依存性の不活性化と関連が強いので通常は分けて観察されないが、我々はパッチクランプ法のインサイドアウト記録法を用いて解析することにより確認する方法を確立した。これらの分子機構を明らかにするために、1分子のカルモジュリンをチャネルのC末端に繋いだチャネル変異体と更にそのN末端部位を欠損したチャネル変異体を作成した。パッチクランプ法による電流記録の解析の結果、N末端欠損チャネル変異体では、高濃度カルモジュリンによる不活性化はあるが、高濃度カルシウムによる不活性化はないことが明らかになった。よってカルシウム依存性不活性化にはチャネルのN末端領域が関与し、カルモジュリン依存性不活性化にはチャネルのN末端領域は不要であることが示唆された。また、カルモジュリン依存性の不活性化状態は、チャネルC末端領域に複数個のカルモジュリンが結合することが示唆された。さらに、野生型チャネルのN末端欠損チャネルを作成し、その不活性化を野生型チャネルと比較することで、N末端領域の役割を検証する。パッチクランプ法での結果をふまえて、チャネルC末端にカルモジュリンを繋いだペプチドを作成し、そのペプチドとカルモジュリンの結合実験を行う。
3: やや遅れている
電気生理実験から見出されたCav1.2チャネルの不活性化モデルを検証するために、チャネルの細胞内ドメインペプチドを作成し、カルモジュリンとの結合実験を行うことにした。また、チャネルC末端にカルモジュリンを繋いだペプチドの作成を試みた。しかし、大腸菌内での目的蛋白の合成が機能せず、方法の修正に時間を要した。
蛋白結合実験に用いるペプチドの発現を安定させるために、アミノ酸配列を再検討する、もしくは発現系を変えるなど検討する。引き続きパッチクランプ法による変異チャネルの電流記録と解析を行う。
学会等がオンライン開催になったため、学会参加に伴う旅費が未使用となった。また、研究が予定通り進まなかったため、論文投稿に関連する費用として計上した謝金が未使用となった。残額は、大腸菌内での蛋白合成が機能しなかったため実施できなかった蛋白結合実験を行うために、発現系の見直しにかかる費用に充てる。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件)
Neurochemical Research
巻: 46 ページ: 523-534
10.1007/s11064-020-03189-7
https://www2.kufm.kagoshima-u.ac.jp/field/advanced-therapeutics/f101/02.html
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~physiol2/index.html