研究課題/領域番号 |
19K07305
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
三輪 尚史 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (40255427)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 受精 / 卵保護膜 |
研究実績の概要 |
令和元年度において、ダイカルシンによる卵周囲構造制御メカニズムを解析することを目的とし、下記の成果を得た。 1.ダイカルシンの受精成立に及ぼす生理機能を解析するために、マウスダイカルシン遺伝子欠損マウスの妊孕性を解析したところ、雌ノックアウトマウスからの胎仔数がコントロールよりも多いことが分かった。また、加齢による変化を解析するために、雌週齢と胎仔数の相関解析をおこなった。その結果、すべての週齢において、マウスダイカルシン遺伝子欠損マウスの胎仔数は多く、ダイカルシンの妊孕性増強効果は、加齢による影響をあまり受けないことが示唆された。自然受精での受精率増強の例はこれまでのところ知られておらず、非常に有意義な結果である。 2.ダイカルシンの卵周囲構造に及ぼす影響を解析するために、マウスダイカルシン遺伝子欠損マウスの未受精卵・卵丘細胞塊の透過型電子顕微鏡解析を行ったところ、卵丘細胞膜の構造が野生型とは異なることがわかった。さらに、詳細に解析することを予定している。 3.精子の膜特性に及ぼすダイカルシンの影響を解析するために、マウス精子に対してパッチクランプ法を適用した。今までのところ、良好なパッチクランプ記録を得ることができていない。マウス精子膜の特性が理由であると考え、至適な実験条件を見つけることを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の令和元年度計画は、1.マウスダイカルシン遺伝子欠損マウスの妊孕性解析、2.卵丘細胞間質および透明帯フィラメントの超微細構造解析、3.先体部蛍光標識トランスジェニックマウスを用いた先体反応のライブイメージング解析である。1.について、ダイカルシンの自然受精への作用が明らかとなり、かつその作用は、加齢による影響をあまり受けないことが示唆された。また、2.についてもすでに予備的結果を得ている。3.については、今のところ、マウス精子の膜特性により、良好なパッチクランプ記録を得ることができてはいないものの、実験条件を改良することを試みている。以上より、研究の進展はおおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に引き続き、ダイカルシンの卵周囲構造に及ぼす影響を解明する。そのために、ダイカルシンの卵周囲構造フィラメント特性および糖鎖分布への影響の解析を進める。また、ダイカルシンの精子膜に及ぼす影響を解析するために、まず、マウス精子のパッチクランプ記録方法を確立する。これまでに、マウス精子膜のパッチクランプ記録の報告は極めて少ないことから、本実験によって得られる成果は、独自性が高く、有意義な結果になる可能性が高いと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の支出を適正に行ったことにより、本年度の所要額に比べ、1万円以内の未使用額があった。この未使用分は、次年度に繰り越して使用する予定である。
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