令和3年度において、ダイカルシンによる卵周囲構造制御メカニズムを解析することを目的とし、下記の成果を得た。 1.ダイカルシンの標的分子を同定するために、マウス卵巣腫瘍細胞の水溶性および膜画分を調製し、二次元電気泳動後メンブレンに転写し、蛍光標識ペプチドと反応させたところ、強い蛍光シグナルとなるスポットが分離できた。このスポットについて質量分析を行い、複数の候補分子を推定できた。現在、候補分子を調製し、蛍光標識ペプチドと反応させ、相互作用を検証中である。また、ダイカルシンは、タンパク質以外にも糖鎖や脂質に結合する可能性が考えられたので、複数種類の糖鎖・脂質についてアレイ解析を行ったところ、蛍光標識ダイカルシンと強く反応する糖鎖が同定できた。今後、ダイカルシンがこの糖鎖に結合することにより卵・卵丘細胞複合体に及ぼす影響について解析する予定である。 2.マウスダイカルシンの受精阻害作用の責任領域を同定するために、マウスダイカルシン全長アミノ酸配列を7つの領域に分け、各々の領域に対応するペプチドを合成し、卵・卵丘細胞塊への結合能を解析した。その結果、いくつかのペプチドが結合を示し、その中でも最大の結合能を示す領域を同定した。このペプチドは、in vitro受精率を低下させることを示唆する結果を得られた。3.精子の膜特性に及ぼすダイカルシンの影響を解析するために、マウス精子に対してパッチクランプ法を適用した。今までのところ、良好なパッチクランプ記録を得ることができていない。マウス精子膜の特性が理由であると考え、至適な実験条件を見つけることを試みている。
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