研究課題/領域番号 |
19K07306
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山澤 徳志子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00282616)
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研究分担者 |
村山 尚 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10230012)
小川 治夫 東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (40292726)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リアノジン受容体 |
研究実績の概要 |
筋小胞体膜にあるリアノジン受容体(RyR1)は、Ca2+誘発性Ca2+放出(Ca2+-induced Ca2+ release; CICR)の特性を示し、300種類以上の点突然変異が同定されており、悪性高熱症(malignant hyperthermia ,MH)やセントラルコア病(CCD)等の筋疾患を引き起こすと考えられている。RyR1の変異の大部分は、3箇所の「ホットスポット」領域に見出されているが、たった一つのアミノ酸変異が、この巨大なイオンチャネル蛋白分子の働きを変調する制御機構や実際の病態との相関は未だ不明な点が多い。RyR1のホットスポット領域の1つであるN末端領域(NTD)の構造的特徴についての知識を得るために、in silicoで突然変異体の分子構造を構築することにより、これまでに機能解析をしたMH変異体およびWTの分子動力学(MD)計算を行った。 これら結果をもとに、遺伝子点変異マウスを作出し、個体レベルで検証した。RyR1遺伝子点変異マウスのホモは胎生死を引き起こした。野生型マウスでは、2時間のイソフルラン吸入麻酔中、ほとんど体温上昇は見らなかった。一方、ヘテロマウスはイソフルラン吸入開始後20分頃から急激な体温上昇を引き起こし、最終的には43℃まで体温が上昇して死亡するMH様症状を示した。RyR1阻害薬であるダントロレンの事前投与により体温上昇を阻害した。また、イソフルラン麻酔により体温上昇中のヘテロマウスにダントロレンを投与することで体温低下を引き起こした。これより、RyR1遺伝子点変異ヘテロマウスは悪性高熱症モデル動物として有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mモデルマウスを用いることでリアノジン受容体変異体遺伝子の個体レベルでの機能解析方法が確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
MHモデルマウスを用いた機能解析を進めるとともに、MDの計算時間を500ナノ秒まで延長して解析し、分子動力学計算から得られた原子の配置を簡便に可視化できる解析手法を構築する。また、心臓に発現しているRyR2にも点変異が報告されおり、主にカテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)を引き起こすと示唆されている。RyR2についてRyR1と同じ手法でMD計算を行う。RyR2についても、N末端領域はX線結晶構造が解かれているので、この構造を用いてMD計算を行う。RyR2にもRyR1で見出された塩橋/水素結合ネットワーク形成に関与するアミノ酸残基が保存されていることが一次構造により確かめられてので、これらに人工的変異(アラニン置換)を導入してMD計算を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で物品の納品が4月に送れたため。
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